然有事(読み)さること

精選版 日本国語大辞典 「然有事」の意味・読み・例文・類語

さる【然有】 事(こと)

  1. ( 以前のある事実をさして ) そのようなこと。そのような事柄。そんなこと。
    1. [初出の実例]「此世の人は、男は女にあふ事をす、女は男にあふことをす。其後なん門ひろくもなり侍る。いかでか、さる事なくてはおはせん」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  2. ( 前のことばを、肯定承認気持で受けて ) そうであるはずのこと。そのとおりのこと。
    1. [初出の実例]「『十六の大国にも、さばかりの所やは侍らん』うへ『そや、さることぞや。いとゆかしけれ』」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)
  3. ( 「さることあり」の形で感動詞的に用いられて ) 相手のことばによって忘れていたことを思い出したときの感動、また相手のことばへの同感賛意などを表わす。まことにそうであった。ほんとうにそのとおりである。なるほど。ほんとうだ。
    1. [初出の実例]「『あれこそ聞え候竹生嶋にて候へ』と申す。『げにさる事あり。いざや参らん』」(出典:平家物語(13C前)七)
  4. いうまでもないこと。当然であること。むろんのこと。
    1. [初出の実例]「裳、からぎぬの縫物をばさることにて」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日)
    2. 「人々あはれにみたてまつる。それ、さることに侍り」(出典:大鏡(12C前)三)
  5. しかるべきさまであること。まずまず承認できるさまであること。なみのこと。
    1. [初出の実例]「橋殿に着きてついふし拝まるるまではさる事にて」(出典:山家集(12C後)下)
  6. しかるべき原因または理由。あるいきさつ。
    1. [初出の実例]「去(サル)事ありて同役三人一度に浪人せし事、侍のならひとはいひながら」(出典浮世草子新可笑記(1688)五)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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