熱中症警戒アラート(読み)ねっちゅうしょうけいかいあらーと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱中症警戒アラート」の意味・わかりやすい解説

熱中症警戒アラート
ねっちゅうしょうけいかいあらーと

熱中症対策に使われている暑さ指数を広く知ってもらい、熱中症で救急搬送される人を減らそうと、環境省気象庁共同して実施するもので、関東甲信の1都8県は2020年(令和2)7月から、残りの地方は2021年4月から運用を開始した。発表基準は、暑さ指数33℃以上である。

 熱中症対策に使われている「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」は、次式で表される。

 屋外:暑さ指数=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
 屋内:暑さ指数=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
 ここで、湿球温度は、温度計の球部を布でおおって湿らせた湿球温度計で測った温度で、空気が乾いているほど蒸発熱を奪われて気温との差が大きくなる。黒球温度は、輻射(ふくしゃ)熱を測るため、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度センサーを入れた黒球温度計で測った温度である。乾球温度は、通常の温度計を用いて測った温度である。

 熱中症警戒アラートが実施されるまでは、気象庁と環境省が独自に熱中症対策のための情報を発表していたが、それぞれ問題をかかえていた。気象庁は、2011年(平成23)7月から最高気温が35℃以上の猛暑日になると予想されたときに高温注意情報を発表している。これは、同年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の影響で全国の原子力発電所が発電を停止し、省エネルギーや節電対策がとられた結果として、熱中症が問題となったからである。また、環境省では、2006年から暑さ指数の情報提供をホームページで始めているが、暑さ指数の単位℃と気温の単位℃が紛らわしいことや、基準がわかりにくいことなどから、認知度が低いままで、あまり活用されていなかった。

 2023年4月、「気候変動適応法」(平成30年法律第50号)の改正法が成立し、熱中症対策を強化するため、2024年夏からは「熱中症警戒アラート」に加え、「熱中症特別警戒アラート」を発表することになり、そのための準備が進められた。地方自治体は、あらかじめ避難者施設として冷房が効いた「クーリングシェルター」とされる施設を指定し、特別警戒アラートが発表された場合は住民に開放する。

饒村 曜 2023年9月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「熱中症警戒アラート」の解説

熱中症警戒アラート

熱中症の危険性が極めて高いと予測される場合に環境省と気象庁が共同で発表する情報。気温、湿度日差しの強さから算出する「暑さ指数(WBGT)」を発表の基準とし、同指数が最高レベルの危険度を示す33以上になると予測した場合に、その前日の夕方または当日の早朝に発表する。国民に熱中症への対策を呼びかけるため、従来の高温注意情報に代わり、2020年7月から関東甲信の1都8県で試行が開始された。21年度から全国運用が予定されている。

(2020-8-18)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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