地殻内の高温水溶液(熱水)との反応により,既存の岩石中の鉱物共生や組織が変化する作用。地殻内にはさまざまな起源をもつ熱水(鉱化流体)があり,移動,滞留,循環などを起こしている。地殻内の岩石は低温(堆積岩など)から高温(火成岩など)にいたるさまざまな温度で形成され,その温度で安定な鉱物組合せをもっている。これらの岩石が,さまざまな温度の熱水(通常100~600℃程度)と接触すると,熱水との間に熱と物質の交換を行い,その条件下で安定な鉱物の組合せに変化する。水溶液が存在しているため反応が速く,多量の物質移動を伴うこと,また変化の及ぶ範囲が比較的狭いことが,変成作用との相違点である。変質をうける岩石や熱水の化学組成・温度により,生成する鉱物(変質鉱物)は大きく異なるが,既存の無水ケイ酸塩鉱物の多くは,緑泥石,絹雲母,緑レン石,各種の粘土鉱物や沸石類などの含水ケイ酸塩鉱物に変化する。これらの鉱物共生を支配する温度,熱水の化学組成などは,熱水の供給通路から変質の及ぶ末端部に向かって規則的に変化することが多いので,熱水変質にはしばしば変質鉱物の帯状分布がみられる。
執筆者:島崎 英彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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