改訂新版 世界大百科事典 「牧氏」の意味・わかりやすい解説
牧氏 (まきうじ)
中・近世の武家。尾張・三河・駿河・伊豆・上野をはじめ山陰・山陽・九州各地に存在するが,史上とくに有名なのは尾張と駿河の牧氏である。(1)尾張の牧氏は清和源氏斯波(しば)氏の支族で,斯波義統の子孫が牧氏を称したといわれる。(2)駿河の牧氏は駿河郡大岡牧(現,静岡県沼津市大岡)出身の中世武家。初め大岡姓を名のる。平安末期大岡宗親が平頼盛に仕えて大岡牧を支配した。頼盛は平家一族の中で源氏と親しい関係にあり,その因縁からか宗親は鎌倉御家人となり,宗親の娘(一説に姉妹)が北条時政の後妻に迎えられた。この時政の後妻は牧の方と呼ばれ,時政との間に生まれた娘を平賀朝雅の妻としたが,1205年(元久2)閏7月牧氏の変により朝雅は殺され,牧の方は時政とともに伊豆の北条へ隠退させられた。
執筆者:飯田 悠紀子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報