物狂(読み)ブッキョウ

デジタル大辞泉の解説

ぶっ‐きょう〔‐キヤウ〕【物狂】

《「ものぐるい」を音読みにした語》
心が乱れて正常な判断ができないこと。
「―の者もしるしありと聞きて」〈沙石集〇末〉
とんでもないこと。あきれたこと。
「なう、そなたのなりは―や」〈虎明狂・鈍太郎

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大辞林 第三版の解説

ぶっきょう【物狂】

〔「ものぐるい」の漢字表記「物狂」を音読みした語〕
常軌を逸していること。 「 -の人にて悪しき様にや/盛衰記 19
あきれたこと。心外なこと。 「『なうなうおぢやれ、物いはう』『ああ-や』/狂言・猿座頭」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

ぶっ‐きょう ‥キャウ【物狂】

〘名〙 (「ものぐるい」の音読)
① ものぐるおしいこと。常軌を逸していること。また、その人。
※米沢本沙石集(1283)九「不可思議の功能多く侍り、物狂(フッキャウ)の者も、あまたなをり侍り」
② (相手の挙動を非難する時に用いる) あきれたこと。とんでもないこと。
※虎明本狂言・鈍太郎(室町末‐近世初)「なふ、そなたのなりは、ぶっきゃうや」

もの‐ぐるい ‥ぐるひ【物狂】

〘名〙 (古くは「ものくるい」とも)
① 正気でなくなること。精神状態が乱れてしまうこと。また、その人。乱心。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※撰集抄(1250頃)五「そこはかとなきそぞろごとうち言ひて、物狂のごとし」
② 神がのりうつること。神がかること。また、その人。
※平家(13C前)二「此物ぐるひはしりまはってひろひあつめ、すこしもたがへず一々にもとのぬしにぞくばりける」
③ 能・狂言で、子どもや夫・妻を失うなど、精神的打撃により一時的に興奮状態となって、歌舞・物まね芸を演じること。また、その人。放浪する場合が多い。能「隅田川」、狂言「枕物狂」などのシテ。
風姿花伝(1400‐02頃)二「舞・白拍子、又は物ぐるひなどの女懸り、扇にてもあれ」

もの‐ぐるおし・い ‥ぐるほしい【物狂】

〘形口〙 ものぐるほし 〘形シク〙 (「もの」は接頭語) 気が変になりそうである。ものにとりつかれて正気を失っているようだ。ものぐるわしい。
※蜻蛉(974頃)上「もりぬるるさわぎをするに、かくの給へるぞ、いとどものぐるをしき
※徒然草(1331頃)序「心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」
ものぐるおし‐げ
〘形動〙
ものぐるおし‐さ
〘名〙

もの‐ぐるわし・い ‥ぐるはしい【物狂】

〘形口〙 ものぐるはし 〘形シク〙 =ものぐるおしい(物狂)
源氏(1001‐14頃)手習「惜しく悔しう悲しければ、つつみもあへず、物ぐるはしきまでけはひもきこえぬべければ」
ものぐるわし‐げ
〘形動〙
ものぐるわし‐さ
〘名〙

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