狂言の曲名。女狂言。大蔵,和泉両流にある。3年ぶりに九州の旅から都へ戻った鈍太郎が,まず下京の本妻,つぎに上京の愛人を訪れるが,久しい無沙汰のため,2人とも本当の鈍太郎と思わず,戸を開けようともしない。悲観した鈍太郎は元結を切り隔夜(一定期間,一晩ずつ特定の寺社を泊まり歩き,参詣修行すること)に出ようとする。一方,あとで本当の鈍太郎と知った本妻と愛人は,2人で鈍太郎に会い,出家を思いとどまらせようと頼むが,鈍太郎はなかなか承知しない。だが結局,ひと月を上15日と下15日とに分けて,上京・下京双方へ通い分けることに決め,鈍太郎は2人の女の手車に乗って得意満面で帰って行く。
登場は鈍太郎,妻,愛人の3人で,鈍太郎がシテ。後半,男が愛人への偏愛を示すのが笑いを誘う。高級住宅地上京に妾宅を,商工業の中心地下京に本宅を配したのも風俗の反映といえる。《天正狂言本》には《女楽阿弥(おんならくあみ)》の名で載っている。古作の狂言。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。「どんたろう」とも。女狂言。3年ぶりに帰京した鈍太郎(シテ)が下京の本妻のもとへ戻ると、若い衆のいたずらと思った妻は、棒使いを男にもったと脅して追い払う。そこで上京の妾(めかけ)を訪ねるが、やはり若者がなぶるものと思い込んで長刀(なぎなた)使いを男にしたという。鈍太郎は人の心に無常を感じて神社仏閣の参詣(さんけい)修行に出ようと決心し中入りする。訪ねてきたのが実の鈍太郎であったことを知った妻と妾が心をあわせ上下の海道で待っていると、鈍太郎が念仏を唱えながら通りかかる。2人に引き止められた鈍太郎は、小の月(陰暦)でも1日多いように月の前半15日を妾のところ、後半を妻のところへ行くことに決め、両人の手車に乗って帰って行く。ことごとに妾のほうに好意を示す露骨な演技が笑いを誘う。
[林 和利]
…《末広がり》など脇狂言の果報者物に用いられるが,太郎冠者が主人の機嫌をとるなどの設定で謡われ,小鼓,大鼓,太鼓が伴奏し,シャギリ留めに連結する。また,《煎物(せんじもの)》《鈍太郎(どんだろう)》などでも,神事の山車(だし),手車などの囃子に用いられている。ただし,これらはシャギリには続かず,《煎物》以外は打楽器の伴奏も入らない。…
※「鈍太郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新