状態空間(読み)じょうたいくうかん(その他表記)state space

改訂新版 世界大百科事典 「状態空間」の意味・わかりやすい解説

状態空間 (じょうたいくうかん)
state space

たとえば,質点の運動で,現在の位置と速度と,今後加わる外力とがわかると,今後の運動は確定する。自動販売機で現在までの投入済金額と今後の硬貨投入や押しボタン操作がわかると,今後の動作は確定する。現在の位置と速度ないし投入済金額が過去のどういう経緯で到達されたものであるかは,今後のふるまいに影響を及ぼさない。このように,ある事物現象の将来のふるまいを予測するために,いくつかの変数の現在値と将来外部から加えられる作用とを知れば足りるとき,いいかえるといくつかの変数の現在値が過去の履歴のうち,将来のふるまいに影響を及ぼす効果のすべてを集約して表現するものであるとき,それらの変数を状態変数state variableという。状態変数は,位置や速度のように連続量のこともあり,投入済金額のように離散的な量のこともある。

 有限個の変数x1x2,……,xnが上記の状態変数の資格をもつとしよう。このx1x2,……,xn座標軸とするn次元空間を想定すると,対象の状態はこの空間における1点で代表され,対象の状態の時間的推移はこの代表点が空間内を移動する軌道で表される。この空間を状態空間という。二次元の場合を図に例示する。三次元以上の場合,状態空間での軌道を図示することは難しいが,状態変数の概念は,対象の状態の動きを調べたり,好ましい状態へ移すために,外部から加えるべき作用を求めたりするうえで有用であり,自動制御理論などで,重要な役割を果たしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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