日本大百科全書(ニッポニカ) 「猿裁判」の意味・わかりやすい解説
猿裁判
さるさいばん
Scopes Trial
1925年、アメリカ、テネシー州デイトンの高校教師ジョン・T・スコープスが、公立学校で進化論を教えることを禁じている州法を犯してそれを教えたため裁判にかけられた事件。判決は有罪で、彼は罰金100ドルを言い渡された。告訴人は進化論に反対するファンダメンタリスト(根本主義者)で、彼らは進化論が聖書の忠実な解釈を否定している点だけでなく、宗教上の現代主義が国家の道徳的基盤を脅かしている点をも強く主張。この裁判において世俗面では、科学を教える権利と、州がどこまで公立学校での宗教教育の本質を決定しうるかが問題となり、さらに宗教面では根本主義者の勢力を試すこととなった。裁判後、科学的証拠や事実すら認めようとしない彼らの態度が明らかとなり、逆に勢力を弱める結果となった。
[野村文子]