加藤高明内閣(読み)かとうたかあきないかく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「加藤高明内閣」の意味・わかりやすい解説

加藤高明内閣
かとうたかあきないかく

大正期、加藤高明首班として組織された第一次、第二次の内閣

[木坂順一郎]

第一次

(1924.6.11~1925.8.2 大正13~14)
第二次護憲運動の結果、清浦奎吾(きようらけいご)内閣を打ち倒して成立した憲政会立憲政友会革新倶楽部(くらぶ)の3党による連立内閣護憲三派内閣と通称されたこの内閣の成立により政党政治が確立したが、それは大正デモクラシー運動に示された人民のエネルギーを政党が巧みに吸収しつつ天皇制のブルジョア的改革を推し進め、支配体制内部における政党と独占ブルジョアジーの比重が一段と高まったことを意味した。加藤内閣は、一方では外相に幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)を据え、英米協調、中国内争不干渉、日ソ基本条約締結による国交回復など、いわゆる幣原外交を展開し、他方では1925年の第50議会で男子普通選挙法を成立させ、政党政治の基礎を固めようとした。しかし加藤内閣は、普選法の成立と日ソ国交回復の代償として治安維持法制定し、人民の運動の改良主義には普選法で、革命主義には治安維持法で対抗するという硬軟両面をもつ新しい人民支配の方式を確立した。さらに貴族院改革と陸軍4個師団廃止を実現するとともに、1925年4月から中等学校以上の学校で現役将校による軍事教練を実施したが、軍部や官僚のもつ諸特権の改革には成功せず、行財政整理も不十分に終わった。1925年5月の政友会と革新倶楽部犬養(いぬかい)派の合同(政革合同)を契機に政友会と憲政会の対立が表面化し、税制改革問題をめぐって閣内不統一に陥り総辞職した。

[木坂順一郎]

第二次

(1925.8.2~1926.1.30 大正14~15)
憲政会、立憲政友会、政友本党という3派三すくみの状況のなかで、憲政会単独内閣として成立した。加藤内閣は政友本党総裁床次竹二郎(とこなみたけじろう)らの主流派との提携に成功して議席の過半数を占め、貴族院の研究会や公正会とも協力関係をもつに至ったが、加藤首相の病死により総辞職した。後継内閣は、若槻(わかつき)礼次郎を首相として組織された。

[木坂順一郎]

『林茂・辻清明編『日本内閣史録3』(1981・第一法規出版)』


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百科事典マイペディア 「加藤高明内閣」の意味・わかりやすい解説

加藤高明内閣【かとうたかあきないかく】

(1)第1次。1924年6月11日―1925年8月2日。憲政会政友会革新倶楽部による護憲三派内閣。議会の多数による政党内閣で,政党政治の始まり。普通選挙法制定,日ソ国交回復を実現したが,同時に治安維持法を制定。また4個師団廃止の軍縮,軍備の近代化,学校軍事教練を実施。普選法制定で三派の協調が破れて総辞職。(2)第2次。1925年8月2日―1926年1月30日。第1次に次ぎ憲政会単独内閣として成立,政友本党と提携。加藤の発病後,若槻礼次郎が代理を務めたが,加藤の死去で総辞職。→加藤高明
→関連項目小川平吉護憲運動政党内閣

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「加藤高明内閣」の解説

加藤高明内閣
かとうたかあきないかく

憲政会総裁の加藤高明が組織した政党内閣(1924.6.11~26.1.30)。はじめは護憲三派内閣(憲政会・政友会・革新倶楽部)。第2次護憲運動で護憲三派が勝利して成立。第50議会で貴族院改革・普通選挙を実現,また治安維持法を制定。宇垣一成(かずしげ)陸相による陸軍軍縮も実行された。幣原(しではら)喜重郎外相は中国内政不干渉方針をとり,ソ連との国交を回復した。1925年(大正14)7月,税制整理をめぐる憲政会と政友会の対立により総辞職したが,背後には中国政策をめぐる対立があった。8月2日,憲政会単独内閣に改造し政友本党と提携したが,第51議会の会期中,首相の病死により総辞職した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「加藤高明内閣」の解説

加藤高明内閣
かとうたかあきないかく

加藤高明を首班とする護憲三派連立内閣,のち憲政会単独内閣(1924〜26)
〔第1次〈1924.6〜25.7〉〕 第2次護憲運動で清浦奎吾内閣を倒したあと,憲政会総裁の加藤が首相となり組閣。ソ連邦と国交樹立,普通選挙法・治安維持法の制定を行うが,まもなく立憲政友会と対立して辞職。〔第2次〈'25.8〜26.1〉〕 引き続き憲政会単独の第2次内閣を組織したが,加藤がその在任中病死し,総辞職した。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

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