日本大百科全書(ニッポニカ) 「瓜州」の意味・わかりやすい解説
瓜州
かしゅう / クアチョウ
中国、甘粛(かんしゅく)省北西部にある酒泉(しゅせん)市の県。旧称は安西(あんせい)。祁連(きれん)山脈の北東、河西(かせい)回廊のもっとも北西にあり、西域(せいいき)の砂漠地帯への入口にあたる。常住人口14万8798(2010)。古来、美しい瓜を産したことからこの名がつけられた。疏勒河(そろくが)の形成するオアシスの一つで、小麦や綿花が生産される。唐代には西の沙州(さしゅう)(敦煌(とんこう))と並んでシルク・ロードの要衝であった。ここから北西にハミ(クムル)、トゥルファンを経由する道と、南西にタリム盆地の南辺を通る道との分岐点をなす。蘭新(らんしん)線、敦煌線(柳溝(りゅうこう)―敦煌)が県内を通る。
県の南の山地に楡林窟(ゆりんくつ)(万仏峡)がある。周辺のゴビ(灌木(かんぼく)だけがまばらに生えている砂漠)地帯では、典型的な風食地形(ヤルダン)がみられる。県南東部、ヤルダンの荒野にある鎖陽城(さようじょう)は唐代のオアシス都市の遺跡で、2014年「シルク・ロード:長安‐天山(てんざん)回廊の交易路網」の構成資産として、世界遺産の文化遺産に登録されている(世界文化遺産)。
[秋山元秀・編集部 2017年6月20日]