日本大百科全書(ニッポニカ) 「産業クラスター」の意味・わかりやすい解説
産業クラスター
さんぎょうくらすたー
industrial clusters
情報通信、バイオ・医薬、環境といった特定分野の企業、大学・研究機関、法律事務所、会計事務所などのビジネスを支援する専門組織、公的機関、ベンチャー企業を育てるインキュベーター組織などが一定地域に集積した状態をさす。クラスターとはブドウなどの房を意味し、限られた地域の産官学が互いに競争、協力しながら技術革新(イノベーション)を重ね、新たな商品やサービスを生み出すことで産業育成と地域振興を目ざす概念である。産地企業集積といわれることもある。
ハーバード大学ビジネススクール教授のマイケル・ポーターMichael E. Porter(1947― )が産業クラスター構想を提唱。国内で特色ある産業集積地が数多く誕生することが、競争原理を通じて国家の産業競争力の向上につながるという競争戦略論を主張した。情報通信産業が集積したアメリカのシリコンバレーが代表例で、同国のオースチン(情報通信)、イギリスのケンブリッジ(バイオ)、ドイツのミュンヘン(医薬バイオ)、フィンランドのオウル(バイオ、情報通信)などが知られている。日本では経済産業省の主導のもと、全国で40か所以上の産業クラスター計画が進んでおり、愛媛県今治(いまばり)市の造船業などを中心とした「海事クラスター」など成果をあげている地域もある。
[編集部]