日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラスター」の意味・わかりやすい解説
クラスター
くらすたー
cluster
ある感染症に罹患(りかん)した患者の集団。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の感染拡大以降は、とくに新型コロナウイルスの感染が確認された集団をこのようによぶことが定着した。本来は「群れ」「集団」の意であり、物理学では原子や分子の集合体をいい、都市計画の分野でも用いられる。
新型コロナウイルス感染症のクラスターは、職場、会食、イベントなどで形成されることがある。クラスターを定義するうえで、人数についての規定はないが、日本においては便宜的に5人以上を一つの目安としていることが多い。クラスターが発生した際、対応が遅れると感染者数が増え、より大きなクラスターとなることがある。このため保健所は、感染者からの聞き取りなどを行って、クラスター発生の有無について周囲にいた人への検査をするなどして感染拡大防止に努めている。
ただし、クラスターといっても、それを形成する感染者の社会的な属性などにより、さらに感染を拡大させるかどうかのリスクは異なる。たとえば、繁華街におけるある店舗でのクラスターで、客ないし事業を行う者が感染したことが判明した場合には、感染がその地域全体に広がる可能性を想定する必要がある。一方で、医療機関や高齢者施設でのクラスターは、そこから地域に広がるというよりは、地域での感染の広がりからこうした場面でのクラスター発生に至ったと考えることができる。後者の場面でのクラスターは、新型コロナウイルスにおいては、多くの高齢者に感染し、重症化したりすることで地域の医療が逼迫(ひっぱく)したり、多くの人が亡くなるといった事例がみられた。
[和田耕治 2021年10月20日]