田沼騒動物(読み)たぬまそうどうもの

改訂新版 世界大百科事典 「田沼騒動物」の意味・わかりやすい解説

田沼騒動物 (たぬまそうどうもの)

歌舞伎,浄瑠璃の一系統。1784年(天明4)江戸城内で佐野善左衛門(佐野政言)が若年寄田沼意知(おきとも)を刃傷,佐野が切腹した事件を扱った作品群。田沼親子の専横民衆反感は強く,佐野の墓所には世直し大明神の幟(のぼり)が奉納された。事件後まもない同年8月に,大坂中(なか)の芝居で《稲光田毎月(いなびかりたごとのつき)》(奈河七五三助(ながわしめすけ)作)が上演され,〈曾我〉の世界に仮託し,際物(きわもの)として脚色された。1789年(寛政1)8月大坂此太夫座の浄瑠璃《有職鎌倉山(ゆうしよくかまくらやま)》(9段,菅専助(すがせんすけ)ら作)は〈鉢の木〉の世界にしたてて上演,大当りであった。本作はその年10月に京都亀谷座で歌舞伎化され,12月には大坂角(かど)の芝居でも《鎌倉比事青砥銭(かまくらひじあおとぜに)》として上演,江戸では翌年5月市村座で上演された。ほかにも他の世界と混交した書替物が各種生まれた。実録風の作としては1879年2月市村座《佐野系図由緒調(ゆいしよしらべ)》(3世河竹新七作)がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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