河竹新七(読み)カワタケシンシチ

デジタル大辞泉 「河竹新七」の意味・読み・例文・類語

かわたけ‐しんしち〔かはたけ‐〕【河竹新七】

歌舞伎脚本作者。
(初世)[1746~1795]幼名、竹三郎。俳号、能進。江戸で活躍し、浄瑠璃世話物に長じた。作「垣衣恋写絵しのぶぐさこいのうつしえ」など。
(2世)河竹黙阿弥の前名。
(3世)[1842~1901]江戸の人。本名、菊川金太郎。前名、竹柴金作。俳号、是水。河竹黙阿弥の高弟。江戸で活躍し、講談・人情ばなしなどの脚色物が多い。作「塩原多助一代記」「籠釣瓶花街酔醒かごつるべさとのえいざめ」など。

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精選版 日本国語大辞典 「河竹新七」の意味・読み・例文・類語

かわたけ‐しんしち【河竹新七】

  1. 歌舞伎脚本作者。
  2. [ 一 ] 初世。俳名能進。安永・天明期(一七七二‐八九)の江戸で活躍。作品「垣衣恋写絵(しのぶぐさこいのうつしえ)」。延享三~寛政七年(一七四六‐九五
  3. [ 二 ] 二世。河竹黙阿彌の前名。
  4. [ 三 ] 三世。俳号是水。黙阿彌の高弟。明治一七年(一八八四)に三世襲名。作品「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」「塩原多助一代記」「怪異談牡丹灯籠」。天保一三~明治三四年(一八四二‐一九〇一

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改訂新版 世界大百科事典 「河竹新七」の意味・わかりやすい解説

河竹新七 (かわたけしんしち)

歌舞伎作者。(1)初世(1747-95・延享4-寛政7) 本名竹三郎,俳号能進,別号能進斎。明和・安永・天明期(1764-89)に江戸で主として初世中村仲蔵のために世話物や浄瑠璃所作事を書いたが,経歴は明らかでない。常磐津の《垣衣恋写絵(しのぶぐさこいのうつしえ)》(荵売(しのぶうり))が有名。仲蔵の随筆《秀鶴日記》も彼の著といわれる。(2)2世 河竹黙阿弥の前名。(3)3世(1842-1901・天保13-明治34) 本名菊川金太郎,俳名是水,前名初世竹柴金作。江戸神田に生まれ浅草で奉公するうち黙阿弥の作に傾倒石塚豊芥子の紹介でその門に入った。1857年(安政4)市村座で竹柴金作となり,72年(明治5)中村座立作者。84年引退した師の前名を継いで3世河竹新七となり,市村座・歌舞伎座の立作者をつとめた。脚色物に機知趣向の才を生かし,洒脱と速筆でも知られた。代表作に《籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)》(1888年千歳座)はじめ《塩原多助一代記》《怪異談(かいだん)牡丹灯籠》《江戸育御祭佐七》など。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「河竹新七」の意味・わかりやすい解説

河竹新七
かわたけしんしち

歌舞伎(かぶき)作者。

初世

(1746―95)中村座の座付作者として修業、一時頭取(とうどり)も勤めた。天明(てんめい)期(1781~89)の名優初世中村仲蔵について常磐津浄瑠璃(ときわずじょうるり)『垣衣恋写絵(しのぶぐさこいのうつしえ)』を書く。2、3年立(たて)作者を勤めたのち、劇界の表面から姿を消し、仲蔵にのみ作品を陰で提供した。仲蔵の姪(めい)婿ともいわれ、『秀鶴(しゅうかく)日記』をはじめとする仲蔵の有名な日記の代筆者ともいう。2世は河竹黙阿弥(もくあみ)の前名。2世福森久助も一時名のったが、代数に数えない。

[古井戸秀夫]

3世

(1842―1901)黙阿弥の弟子。前名竹柴(たけしば)金作。1872年(明治5)に立作者となり、84年に師より3世を譲られる。5世尾上(おのえ)菊五郎のために執筆。『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのよいざめ)』『江戸育御祭佐七(えどそだちおまつりさしち)』などを残す。

[古井戸秀夫]

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朝日日本歴史人物事典 「河竹新七」の解説

河竹新七(初代)

没年:寛政7.3.14(1795.5.2)
生年:延享3(1746)
江戸中期の歌舞伎狂言作者。本名竹三郎。俳号能進。別号能進斎。師については諸説があって未詳。明和1(1764)年,江戸中村座にはじめて名がみえ,以後,江戸で活躍するが,その期間は短く,天明のはじめには引退したらしい。主に初代中村仲蔵のために作品を書き,安永4(1775)年の常磐津浄瑠璃「垣草恋写絵」(「忍売」)は今も演じられる名作。他に「伊達錦対将」「白井権八狂言始」「信太長者柱」などが知られる。仲蔵の随筆『秀鶴日記』も事実は彼の著作という。東京向島百花園に2代目新七を継いだ河竹黙阿弥の追悼文を彫った「しのぶ塚」が建っている。<参考文献>守随憲治『歌舞伎序説』

(諏訪春雄)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「河竹新七」の解説

河竹新七(3代) かわたけ-しんしち

1842-1901 幕末-明治時代の歌舞伎作者。
天保(てんぽう)13年生まれ。河竹黙阿弥(もくあみ)(2代河竹新七)の門にはいる。明治5年東京市村座の立作者となり,17年3代新七を襲名。小説,講談などの脚色がおおい。明治34年1月10日死去。60歳。江戸出身。本名は菊川金太郎。前名は竹柴金作(初代)。俳名は是水。作品に「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」「塩原多助一代記」など。

河竹新七(初代) かわたけ-しんしち

1747-1795 江戸時代中期の歌舞伎作者。
延享4年生まれ。江戸中村座の座付作者となり,安永4年初代中村仲蔵のために常磐津(ときわず)浄瑠璃「垣衣恋写絵(しのぶぐさこいのうつしえ)」をかいて名をあげる。世話物を得意とし,主として仲蔵のため作品を執筆した。仲蔵の「秀鶴日記」の代筆者という。寛政7年3月14日死去。49歳。通称は進三。俳名は能進。

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世界大百科事典(旧版)内の河竹新七の言及

【御摂勧進帳】より

…通称《芋洗勧進帳》。桜田治助河竹新七,奥野瑳助ほか作。1773年(安永2)11月江戸の中村座初演。…

【河竹黙阿弥】より

…歌舞伎作者。本名吉村芳三郎,俳号其水(きすい),現役名2世河竹新七,別号古河黙阿弥。江戸日本橋に湯屋の株の売買業越前屋勘兵衛の長男として生まれた。…

【落語】より


[幕末の江戸落語]
 1842年(天保13)の改革策によって,寄席の数もそれ以前の120余軒から15軒に制限されて衰微した江戸落語界も,改革の中心人物水野忠邦の失脚によって制限が撤廃されるとしだいに復興し,人情噺,芝居噺が流行したが,さらに三題噺の復活から隆盛に向かった。〈粋狂連(すいきようれん)〉〈興笑連(きようしようれん)〉などの三題噺のグループが生まれ,狂言作者の瀬川如皐(じよこう),河竹新七(のちの河竹黙阿弥(もくあみ)),戯作者の山々亭有人(さんさんていありんど),仮名垣魯文(かながきろぶん),絵師の一恵斎芳幾(いつけいさいよしいく)などに,金座役人高野酔桜軒(すいおうけん),大伝馬町の豪商勝田某(春の舎(や)幾久)などをはじめとする江戸の文人や通人,落語家の初代春風亭柳枝(しゆんぷうていりゆうし),3代柳亭左楽(りゆうていさらく)(?‐1872),初代三遊亭円朝などが参加して,三題噺の自作自演に熱中した。このグループ活動を契機として,幕末から明治にかけての東京落語界の中心人物になる円朝が成長したことは意義深かった。…

【江戸育御祭佐七】より

…3幕。3世河竹新七作。1898年5月東京歌舞伎座初演。…

【怪異談牡丹灯籠】より

…同年春,円朝の《塩原多助》を歌舞伎化した《塩原多助一代記》の大当りに続いて,歌舞伎座の興行師田村成義が企画,文芸部長に当たる福地桜痴が構成立案。3世河竹新七ら河竹一門が細部を執筆した。歌舞伎化に当たり,《怪異談牡丹灯籠》と7字に改題。…

【籠釣瓶花街酔醒】より

…8幕。3世河竹新七作。通称《籠釣瓶》。…

【清正誠忠録】より

…歌舞伎狂言。3世河竹新七作。時代物。…

【極付幡随長兵衛】より

…配役は幡随長兵衛を9世市川団十郎,桜川五郎蔵・水野十郎左衛門を市川権十郎,長兵衛女房お時を岩井紫若ほか。初演では町奴と旗本奴の対立にひいき力士の勝負の遺恨を絡めたのを,91年,3世河竹新七が序幕に劇中劇《金平法問諍(きんぴらほうもんあらそい)》を含めた〈村山座けんかの場〉をつけて上演したので,以後これが定型となり,力士桜川のくだりは省略されている。水野十郎左衛門が頭目の白柄組がひいきする力士黒鷲官太夫は,町奴幡随長兵衛のひいき力士桜川五郎蔵に土俵で負けたのを恨み,今川橋で殺そうとして返り討ちに合う。…

【猩々】より

…【横道 万里雄】(2)歌舞伎舞踊,長唄 1874年7月,東京芝に河原崎座が新築開場したとき踊られたもので,本名題《寿二人猩々》。作詞3世河竹新七,作曲3世杵屋(きねや)正次郎,振付初世花柳寿輔。松羽目物。…

※「河竹新七」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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