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市民劇 しみんげきbourgeois drama

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

市民劇
しみんげき
bourgeois drama

18世紀から 19世紀にかけて発達した,中産階級の生活を身近な題材で描く,悲劇的色彩の濃い,まじめな演劇。フランス語では正劇 drame,ドイツ語では市民悲劇 Bürgerliches Trauerspielと呼ばれる。古典的な意味における悲劇でも喜劇でもない,新しい演劇のジャンルとして D.ディドロが主張し,G.レッシングに受継がれて完成をみた。この流れは 19世紀の写実劇や社会劇へと続く一方,メロドラマ的な商業演劇の隆盛を招くことにもなった。

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百科事典マイペディアの解説

市民劇【しみんげき】

18世紀半ば以降の主にフランスで市民階級の台頭とともに盛んになった演劇。古典主義演劇における悲劇喜劇の中間に位置する,それまで喜劇の中にしか登場しなかった市民階級の生活をまじめに扱った道徳的で写実的な演劇。
→関連項目近代劇市民文学

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世界大百科事典 第2版の解説

しみんげき【市民劇】

フランス語drame bourgeois(ドラム・ブルジョア)の訳語で,18世紀半ばの市民階級の台頭とともにヨーロッパ(フランス中心)におこった一群の演劇をさす。とくに〈町民劇〉とも訳される。 18世紀前半までは,多くの戯曲はギリシア・ローマ古典劇の方法にのっとって作られており,悲劇の主人公は,神話的人物,王侯,歴史的な大人物に限られ,普通の市民の登場する演劇はすべて喜劇であった。アリストテレスの《詩学》では,悲劇の主人公が偉大な人物でなければならないのは,破滅の際の落下の距離が大きい方が,悲劇的な効果も大きいからと説明している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

市民劇
しみんげき
drame bourgeoisフランス語

18世紀なかばの約50年間、フランスを中心に流行した演劇の一ジャンル。町民(人)劇とも訳され、単にドラームdrameともいう。18世紀に入り近代的なブルジョア(市民)階級が勃興(ぼっこう)すると、それまでの古典主義演劇にかわって、市民生活を題材とする身近な演劇が好まれるようになった。この傾向は資本主義の先進国イギリスにまず現れ、リロの『ロンドンの商人』(1731)に代表される「家庭悲劇」のジャンルを生んだ。この影響を受けたフランスでは、「催涙喜劇」とよばれる教訓臭の強い感傷的な写実劇が発達し、ラ・ショッセの『メラニード』(1741)などの作品が生まれた。市民劇の理念を明確に打ち出し、理論づけを行ったのはディドロである。彼は喜劇『一家の父』(1758)に付載した論文「劇芸術について」のなかで、古典的な意味で悲劇にも喜劇にも属さない中間のジャンルを「ドラーム(正劇)」と名づけ、散文で書くべきことを主張した。スデーヌの『天成の哲学者』(1765)、メルシエの『酢商人の手押車』(1775)は、ディドロの市民劇理論を継承・発展させた作品であり、またボーマルシェの『フィガロの結婚』(1784)などにもその理念は一部受け継がれている。しかし、市民劇が真の完成をみたのはドイツの「市民悲劇」においてであり、レッシングは『ミス・サラ・サンプソン』(1755)、『エミリア・ガロッティ』(1772)を発表し、市民劇の頂点を形づくった。この流れはシラーの『たくらみと恋』(1784)などを経て、イプセンに始まる近代劇へと引き継がれたが、他方では19世紀のブルジョア的なメロドラマ隆盛の母胎ともなった。[大島 勉]

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世界大百科事典内の市民劇の言及

【近代劇】より

…この種の劇は既成劇場でなかなか受け入れられず,若い演劇人による〈小劇場〉運動によって広められていったが,その運動はヨーロッパの外までも波及し,日本では明治後期から形をなしてくる〈新劇〉運動の基盤ともなった。
[成立過程]
 近代社会あるいは近代人の諸矛盾を客観的・再現的に舞台上に表現しようとする〈近代劇〉の萌芽は,18世紀の〈市民劇〉に求められる。庶民の出る劇は喜劇に限るとする伝統を破って市民悲劇が登場するのはブルジョアジーの台頭と軌を一にするが,その早い例の一つ,G.リッロ(1693‐1739)の《ロンドンの商人》(1731)はロンドンはおろか大陸でも大当りし,ドイツのレッシングに市民悲劇の傑作《ミス・サラ・サンプソン》(1755)を書くきっかけを与えた。…

※「市民劇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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