改訂新版 世界大百科事典 「甲陽軍記物」の意味・わかりやすい解説
甲陽軍記物 (こうようぐんきもの)
講談,人形浄瑠璃,歌舞伎狂言の一系統。《甲陽軍鑑》に材を得ており,甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信との川中島の戦を中心とした両家の対立や事跡などをテーマにした作品群。信玄の軍師,山本勘助の活躍が眼目の一つ。《川中島軍記》として講談に仕組まれ,江戸庶民に親しまれた。人形浄瑠璃としては,1721年(享保6)8月大坂竹本座上演の近松門左衛門作《信州川中島合戦》が初期の代表作。これに先立つ紀海音作の《甲陽軍鑑今様姿》は,1715年(正徳5)秋以前初演と推定される。ほかに《三軍桔梗原(さんぐんききようがはら)》《甲斐源氏桜軍配》など。最も優れているのは,66年(明和3)1月竹本座上演の《本朝廿四孝》で,歌舞伎でも繰り返し上演されている。歌舞伎では1876年3月上演の河竹黙阿弥作《川中島東都錦絵(かわなかじまあずまのにしきえ)》が有名。
執筆者:佐藤 彰
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