改訂新版 世界大百科事典 「略式訴訟」の意味・わかりやすい解説
略式訴訟 (りゃくしきそしょう)
通常の裁判手続より簡易かつ迅速に事件を処理することを目的とする特別訴訟。
民事については,現行法上では督促手続,手形・小切手訴訟(〈手形訴訟〉の項参照),仮差押え・仮処分の手続(〈民事保全法〉の項目参照)がこれに属する。督促手続では,債権者の申立てだけで債務者を審尋せずに実質的な審理をすることなく処分がなされ,手形・小切手訴訟では,当事者が提出しうる証拠方法を制限することによって,手続の簡易・迅速化を図っている。このような略式の手続が規定されるのは,督促手続については通常債務者に請求の存否について争いのないことが多いためであり,手形・小切手訴訟では手形・小切手の流通性を考慮したものである。しかし,相手方がその裁判に不服であれば通常訴訟で争わせることにして,〈裁判を受ける権利〉(憲法32条)の保障を図る。刑事の略式訴訟にあたる〈略式手続〉についてはその項を参照されたい。
執筆者:五十部 豊久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報