仮処分(読み)かりしょぶん

知恵蔵の解説

仮処分

権利に関する紛争について、債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために、財産を差し押さえたり一定の法的な状態を作り出したりして、判決による解決または強制執行が可能となるまで、権利の実現に支障が生じないようにする暫定的措置を行う民事保全制度の一種。金銭債権に関する仮差し押さえに対して、金銭債権以外の権利の保全について行われる。土地など特定の物に対する将来の強制執行を確実にするための、係争物に関する仮処分と、紛争によって債権者に生じる現在の危険や不安を取り除くための、仮の地位を定める仮処分とがある。

(土井真一 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

かり‐しょぶん【仮処分】

訴訟の遅延や債務者の財産隠匿などによって権利の実現が危険に瀕(ひん)している場合、その保全のために、裁判所により暫定的、仮定的になされる処分。係争物に関する仮処分と、仮の地位を定める仮処分とがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

仮処分【かりしょぶん】

権利の実現の保全のためになされる暫定的処置。民事保全(仮差押え)のひとつ。物に関する請求権の将来の執行保全のために,仮差押えと同様の目的から債務者の財産(特定の目的物)の現状保持をねらう〈係争物に関する仮処分〉と,将来の執行には不安はないが,権利関係に争いがあるために,現状について暫定的処置を講じて債権者に生じている現在の不安や危険の除去を図る〈仮の地位を定める仮処分〉(民事保全法23条以下,52条以下)とがある。ともに裁判所の仮処分命令による。
→関連項目仮登記特別上告民事保全法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

かりしょぶん【仮処分 einstweilige Verfügung[ドイツ]】

狭義では,民事保全法に規定されている,〈係争物に関する仮処分〉(23条1項)と〈仮の地位を定める仮処分〉(23条2項)を指すが,広義では,それ以外の法律により規定されている,いわゆる特殊仮処分(特殊民事保全(処分)ともいう)をも含む。なお狭義の仮処分と仮差押え(20条以下)を総称して狭義の民事保全(処分)という。
[係争物に関する仮処分]
 A(債権者もしくは請求権者)がB(債務者もしくは請求権の相手方)に対して,金銭債権以外の債権もしくは請求権(個別給付請求権といってもよい),例えば賃貸借契約終了に基づく家屋明渡請求権を有する場合に,Bが明渡しに応じないときは,Aは強制執行によって強制的に明渡しを受けることができる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

かりしょぶん【仮処分】

訴訟の目的である権利などの保全のために、裁判所によりなされる暫定的な措置。金銭債権以外の権利の執行を保全するためにその現状の維持を命じる、係争物に関する仮処分と、裁判中に権利関係に争いがあることにより生じている危険や不安から債権者を保護するための、仮の地位を定める仮処分がある。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

仮処分
かりしょぶん

執行保全手続の一つで、係争物に関する仮処分(民事保全法23条1項)と、仮の地位を定める仮処分(同法同条2項)との2種がある。係争物に関する仮処分とは、金銭債権以外の特定物の給付請求権の将来における執行を保全するために、現状の変更によりその請求権の執行不能あるいは執行困難が生ずるおそれのある場合に、現状を固定する処分をいう。たとえば、建物・土地の明渡し請求権保全のための占有移転禁止の仮処分、登記(抹消登記)請求権保全のための処分禁止の仮処分、特定動産の引渡し請求権保全のための執行官保管の仮処分などがそれである。
 仮の地位を定める仮処分とは、執行保全とは関係ないが、ある権利関係につき現在争いがあり、その争いの訴訟による解決まで現状を放置したのでは債権者にとって取り返しのつかない損害が発生し、あるいは急迫な強暴にさらされるという場合に、現在の危険や不安を除去するため、権利関係に暫定的に規制を加える処分をいう。たとえば、株式会社の株主総会決議無効確認・決議取消しの訴えなどを予定しての取締役職務執行停止・代行者選任の仮処分、解雇無効確認の訴えを予定しての従業員たる地位を定める仮処分などである。
 仮処分手続は、仮差押えの場合と同じく、仮処分命令を出すか否かを決定する仮処分裁判手続と、仮処分命令に基づく仮処分執行手続とに分かれる。これらについては原則として仮差押えに関する場合と同様である。したがって、被保全権利、保全の理由の疎明(そめい)(いちおうの証明)が必要とされる(ただし、仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論または債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない)が、仮差押えとは異なり、仮処分においては、被保全権利の種類が多様で、かつ保全の必要性にもいろいろの態様のものがあるので、裁判所の命ずる処分の内容にも性質上種々のものがあって、裁判所の裁量にゆだねられている部分が大きい。たとえば、建物の明渡し請求権保全のためには、一般には占有移転禁止の仮処分でよいと考えられるが、債務者が改築して建物の同一性を喪失させるおそれがある場合には、改築を禁止することが必要であろうし、債務者が建物を損壊するおそれのある場合には、執行官保管を命ずる必要がある。また、執行の方法については、処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法で行い、占有移転禁止の仮処分の執行は、移転禁止および執行官への引渡し命令とともに、現実に執行官にそのものを保管させ、それらの旨の公示をする等の方法で行われる。
 なお、仮処分手続は仮差押え手続とともに、民事保全法(平成1年法律第91号)が施行(1991年1月1日)されるまでは民事訴訟法(裁判手続)と民事執行法(執行手続)に分かれて規定されていたが、民事保全法施行後は民事保全として統合された。[本間義信]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

かり‐しょぶん【仮処分】

〘名〙 将来の権利を保全するために、裁判所によってなされる暫定的な処置。係争物に関するもの(民事保全法二三条一項)と、仮の地位を定めるもの(同法同条二項)とがある。
民事訴訟法(明治二三年)(1890)七五五条「係争物に関する仮処分は現状の変更に因り当事者一方の権利の実行を為すこと能はず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の仮処分の言及

【保全訴訟】より

民事保全法(1条以下)の定める仮差押えおよび仮処分の総称。保全処分ともいう。…

※「仮処分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

仮処分の関連情報