異国渡海御朱印帳(読み)いこくとかいごしゅいんちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「異国渡海御朱印帳」の意味・わかりやすい解説

異国渡海御朱印帳
いこくとかいごしゅいんちょう

江戸初期に幕府が海外渡航の貿易船に与えた許可証の控え。金地院崇伝(こんちいんすうでん)(以心(いしん)崇伝)の自筆、1冊。京都市南禅寺金地院所蔵(国指定重要文化財、京都国立博物館保管)。崇伝が、前任の豊光寺承兌(ぶこうじしょうだ/しょうたい)、円光寺元佶(げんきつ)の後を受けて1612年(慶長17)朱印状などの外交事務をつかさどってから、1616年(元和2)までの52通の朱印状について、申請者、斡旋(あっせん)者、手数料、下付(かふ)年月日などを記したもの。なお崇伝は、1604年(慶長9)以降11年までの承兌、元佶時代のものも筆写して「異国御朱印帳」とした。両帳をあわせると、朱印船の渡航地は東南アジア19地、延べ180隻、申請者は大名幕吏商人、在留外国人で80余人を数える。

中村 質]

『村上直次郎訳註『異国往復書翰集・増訂異国日記抄』(『異国叢書11』復刻版・1966・雄松堂書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「異国渡海御朱印帳」の意味・わかりやすい解説

異国渡海御朱印帳
いこくとかいごしゅいんちょう

江戸幕府が海外に渡航する日本商船に渡航許可の朱印状を下付した際,その作成と交付には僧があたった。慶長 17 (1612) 年金地院崇伝 (すうでん) がその役を引継ぐに際し,彼は前任者帳簿を写し,さらに書き継いでいった。その慶長9 (1604) ~元和2 (16) 年の間の朱印の控えをいう。指定渡航地,交付年月日,申請者名などが記され,その渡航先は安南からモルッカなど 19地にわたる。交付数は約 180。申請者は大名,幕吏,商人など 60人ほどである。江戸時代初期の朱印船貿易制度を知るうえでの好史料。京都南禅寺金地院所蔵。

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世界大百科事典(旧版)内の異国渡海御朱印帳の言及

【異国御朱印帳】より

…崇伝は1608年(慶長13)駿府に招かれて徳川家康より外国往復のことを命ぜられ,この朱印帳には1604年より16年(元和2)までの朱印状の交付と朱印船主,渡航地,斡旋者などが記録されている。前半を《異国御朱印帳》,後半を《異国渡海御朱印帳》といった。朱印船貿易の史料としてきわめて貴重であり,朱印船主80名,渡航船数は延べ178隻が明らかにされている。…

※「異国渡海御朱印帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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