材料に,その材料の静的破壊応力よりも小さい応力が繰り返し与えられた場合に,亀裂が徐々に進展し,ついに負荷能力を失う現象。これは,脆性破壊(ぜいせいはかい)などと並び第2次大戦後最大の破壊の原因の一つに挙げられたが,航空機の離着陸による気圧の差がもたらす低サイクル疲労破壊など,機械・構造物の破壊事故は疲労によるものが大部分を占めている。しかし,この現象はその負荷条件あるいは材料の種類に依存して非常に複雑で,現在においても疲労に対する確立された対策というものは存在していない。疲労破壊は耐久限度または疲労限度と呼ばれる応力の特性値で表され,その応力以下では無限の繰返し数に耐え,疲労破壊は生じない限界値を示している。また応力振幅と破壊までの繰返し数の間には一応の対応はみられるものの,同一の条件のもとで一定の応力振幅を与えても,破壊までの繰返し数には大きなばらつきがあり,この現象は確率過程として理解される。
執筆者:岸 輝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
材料が、時間により大きさの変動する力、あるいは一定の力を繰り返し受けることによって破壊する現象。単に疲労ともいう。材料を節約し、軽量で余分な強度をもたせずに高度の機能を発揮することが要求される最近の機械や構造物の設計においては、疲労破壊に対する材料の強さ、すなわち疲労強度は、材料の機械的性質のなかでもっとも重要なものの一つである。疲労破壊は延性材料の場合でも、きわめて局部的な塑性変形しか伴わない。疲労による亀裂(きれつ)は一般に部材断面の縁(へり)に生じてまず破壊の核が形成され、それを中心に亀裂が進展して、有効断面積の減少と亀裂先端での応力集中とにより、ついに全体的破壊に至る。繰り返し加わる応力の大きさが静的な破壊応力より低く、弾性限度以下であっても疲労破壊が生じうる。繰り返し応力の大きさと破壊するまでの繰り返し数との関係を図示したものをSN曲線という。鉄鋼材料では、ある大きさ以下の応力をいくら繰り返し加えても疲労破壊のおこらない限界が存在する(疲労限度)。
[林 邦夫]
…骨折の大部分は,正常な骨にその抵抗力以上の外力が加わって起こる外傷性骨折である。一回一回の外力はたとえ軽微であっても骨の同一部位に繰り返し加えられると,金属の疲労現象のようにその部に骨折が生じる場合があり,これを疲労骨折fatigue fractureという。また骨自体になんらかの病変があって,正常な骨であれば骨折しない程度の外力によって骨折を生じる場合を病的骨折pathological fractureという。…
※「疲労破壊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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