瘙痒

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


そうよう

かゆみ」のこと。皮膚痒症という用語は、かゆみが唯一の症状であって、皮膚をみてもなにもないか、せいぜいかきむしった痕跡(こんせき)をみるにすぎないものを意味するが、場合によっては、皮膚にいろいろの病変があっても、激しいかゆみが主症状である場合、皮膚痒症とよぶこともある。
 かゆみを伝える神経が解明されたのはあまり古いことではない。皮膚の知覚神経をその太さ(直径)で分類すると三段階になる。(1)6マイクロメートルを超える有髄神経は触覚を伝える(例、毛盤の神経)。(2)6マイクロメートル以下3マイクロメートル以上の有髄神経は触覚、痛覚、温度知覚を伝える。(3)3マイクロメートル以下の無髄神経は痛覚および痒を伝える。すなわち痒と痛覚の一部とは同一範疇(はんちゅう)の神経で伝達される。実験的に痛みの刺激を軽く加えるとかゆみを感ずることや、病的状態でおこった痛みが軽くなるときにかゆみに変わることがあるなどは、いずれも痛みとかゆみとの近縁性を思わしめる。さらに痛覚と痒とに共通することは、持続した場合でも「慣れ」の現象がおこらなくて、かえって耐えがたくなることである。冷覚や温覚などの場合に、あまり強い刺激でない限り慣れて気にならなくなるのと趣(おもむき)が違う。
 皮膚病のなかには、かゆいものが少なくないが、痛いものもあり、また痛くもかゆくもないものも少なくない。かゆい皮膚病では、かゆいためかきむしって悪化するという悪循環によって病気の治癒が妨げられるところから、悪循環を断つために止痒剤がしばしば用いられる。止痒剤には外用薬と内服薬とがある。急性湿疹(しっしん)や接触皮膚炎の場合、市販の止痒性の外用薬を用いて、その刺激作用のためにかえって治癒を妨げることがある。この場合は内服用が得策である。副腎(ふくじん)皮質ホルモンは、その強力な抗炎症作用によって止痒効果があるが、適応を誤ると種々の好ましからざる副作用がある。止痒剤として広く用いられているものは抗ヒスタミン剤であるが、医師の指示で用いることが無難である。[川村太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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