内科学 第10版 「癌性胸膜炎」の解説
癌性胸膜炎(胸膜炎)
概念
癌細胞が胸腔内で炎症を惹起し胸水貯留をきたした病態である.癌種別では,肺癌(特に腺癌)が1/3と最も多く,ついで乳癌,リンパ腫,卵巣癌,消化器癌に多い.しばしば血性胸水となる.
病態生理
胸腔内の癌細胞が炎症性サイトカインや血管透過性因子(VEGF)を産生し胸膜の血管透過性が亢進し胸水産生が増加する機序,腫瘍細胞塞栓などにより壁側胸膜のリンパ管が閉塞し胸水の吸収が低下する機序がある.
診断・治療
胸水細胞診で癌細胞を検出し診断する.原発臓器が,不明な場合には胸水細胞のセルブロックを用いた免疫染色が原発臓器の推定に有用な場合がある. 大量の胸水により肺が虚脱している場合には,胸水ドレナージをして肺を拡張させた後,ピシバニールⓇ,ミノサイクリン塩酸塩,シスプラチンなどを用いて胸膜癒着術を行う.原疾患の癌に対する化学療法を行う.[矢野聖二]
■文献
Light RW: Pleural diseases. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報