癌性胸膜炎

内科学 第10版 「癌性胸膜炎」の解説

癌性胸膜炎(胸膜炎)

(4)癌性胸膜炎(pleuritis carcinomatosa)
概念
 癌細胞が胸腔内で炎症を惹起し胸水貯留をきたした病態である.癌種別では,肺癌(特に腺癌)が1/3と最も多く,ついで乳癌,リンパ腫卵巣癌,消化器癌に多い.しばしば血性胸水となる.
病態生理
 胸腔内の癌細胞が炎症性サイトカインや血管透過性因子(VEGF)を産生し胸膜の血管透過性が亢進し胸水産生が増加する機序,腫瘍細胞塞栓などにより壁側胸膜のリンパ管が閉塞し胸水の吸収が低下する機序がある.
診断・治療
 胸水細胞診で癌細胞を検出し診断する.原発臓器が,不明な場合には胸水細胞のセルブロックを用いた免疫染色が原発臓器の推定に有用な場合がある. 大量の胸水により肺が虚脱している場合には,胸水ドレナージをして肺を拡張させた後,ピシバニール,ミノサイクリン塩酸塩,シスプラチンなどを用いて胸膜癒着術を行う.原疾患の癌に対する化学療法を行う.[矢野聖二]
■文献
Light RW: Pleural diseases. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001.

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百科事典マイペディア 「癌性胸膜炎」の意味・わかりやすい解説

癌性胸膜炎【がんせいきょうまくえん】

原発性あるいは転移性悪性腫瘍(しゅよう)により生じた胸膜の変化。原発性のものは少なく,乳房,肺,胃,食道等の近接臓器の転移によるものが多い。限局性または広範な病巣を作り,他種の胸膜炎よりも呼吸困難胸痛が強い。胸水は血性で,癌細胞の証明により確診される。

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世界大百科事典(旧版)内の癌性胸膜炎の言及

【胸膜炎】より

…なお,外傷や大動脈瘤破裂などにより胸膜腔内に血液が貯留するものは,とくに血胸とよばれる。
[原因]
 胸膜炎の原因はいろいろあるが,最も多いのは結核性胸膜炎,癌性胸膜炎であり,近年後者が増加している。そのほか,肺炎,肺化膿症,心膜炎,肺梗塞(こうそく)や,慢性関節リウマチ,全身性紅斑性狼瘡(ろうそう),皮膚筋炎などの膠原(こうげん)病でも胸膜炎を起こすことがある。…

※「癌性胸膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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