卵巣癌(読み)らんそうがん(英語表記)ovarian cancer

  • 卵巣癌(子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

卵巣は親指の頭くらいの大きさで,良性から悪性まで多種多様の腫瘍 (しゅよう) が発生する。このうち,卵巣癌は若年者から老年までいずれの年齢でも起こる。症状は,初期には無症状のことが多く,発見が難しい。腫瘤 (しゅりょう) が腹部いっぱいになるほど大きくなったり,腹水がたまってきたり,下腹痛が起こって初めて発見される場合が多い。たまたま受けた産婦人科検診で異常を指摘されることもある。最近では超音波検査や CTで腫瘤の性質もある程度まで診断できるようになり,血液中の卵巣に特有な物質 (腫瘍マーカー) も測定されるようになった。治療は,可能であれば手術療法を行なって腫瘤を摘出するが,抗腫瘍剤も使用される。しかし,卵巣癌は早期癌性腹膜炎などに移行しやすく,現在のところ治療成績は満足できるものではない。

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内科学 第10版の解説

定義・概念
 卵巣から発生する悪性腫瘍で,その多くは骨盤内の腫瘍性病変として認められる.
分類
 その発生由来によって,表層上皮性・間質性腫瘍,性索間質性腫瘍,胚細胞腫瘍,転移性腫瘍などに分類される.
原因•病因
 強い関連性を示す単一のリスク因子は存在せず,複数の因子が関与していると考えられている.ただし,家族性に発症する乳癌・卵巣癌症候群では,BRCA1,BRCA2遺伝子の変異が高頻度に認められる.婦人科疾患では,骨盤内炎症性疾患,多囊胞性卵巣症候群,子宮内膜症がリスク因子として指摘されている.その他の因子として,肥満,排卵誘発薬,出産歴がないこと,ホルモン補充療法があげられている.
疫学
 好発年齢は組織型によって異なり,表層上皮性腫瘍の場合は40~60歳代である.一方,胚細胞腫瘍の場合は20~30歳代であり,ときに妊孕性温存の問題がある.
臨床症状
 おもな症状は,腹部膨満,腹部腫瘤,下腹部痛などであるが,その解剖学的位置から無症状のことも多い.約半数の症例は,進行期癌として発見されるため,癌性腹膜炎による腹水貯留や胸水貯留による呼吸困難が主訴であることもしばしばある.
診断
 超音波断層法により,骨盤内腫瘍の囊胞内の充実部分や壁の不整な肥厚が認められた場合には悪性が示唆される.さらにCT,MRI検査で,腫瘍の質的診断やリンパ節転移や播種病巣など卵巣外病変の有無も検索する.腫瘍マーカーは,表層上皮性腫瘍の場合は,CA125,CA602,CA72-4,CA546,STNなどが,性索間質性腫瘍の場合はエストラジオール(E2)が,胚細胞腫瘍の場合はAFP,hCGなどが上昇する.ただし,上皮性卵巣癌の腫瘍マーカーとして頻用されるCA125は子宮内膜症,月経,妊娠などの非腫瘍性病変でも上昇することに注意が必要である.
鑑別疾患
 良性卵巣腫瘍,卵管癌,転移性腫瘍,結核性腹膜炎などが鑑別疾患にあげられるが,卵管癌は卵巣癌と同様の治療が行われる.
治療
 原則として手術が行われる.悪性が疑われる場合は,術中迅速病理診断の結果を確認した上で術式が決定され,基本術式(両側付属器摘出術,子宮全摘出術,大網切除術)と病期決定開腹術(staging laparotomy)が行われる.進行期癌では,加えて最大限の腫瘍減量を目指した腫瘍減量術(debulking surgery)が行われる.術後化学療法として,主としてパクリタキセルとカルボプラチンの併用療法が行われる. 妊孕性温存術式を行う条件は,標準術式でないことのインフォームド・コンセントが行われた上で,Ⅰa期,グレード1以下の症例を対象に,患側付属器切除術,大網切除術,腹腔細胞診に加え,対側の卵巣やリンパ節を含む各所の生検が腫瘍減量術として行われる.
予後
 各進行期における5年生存率は,Ⅰ期80~90%,Ⅱ期50~60%,Ⅲ期30~40%,Ⅳ期10~20%程度である.[青木大輔・森定 徹]
■文献
日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん治療ガイドライン2010年版,金原出版,東京,2010.
日本産科婦人科学会編:子宮内膜症取扱い規約 第2部 第2版,金原出版,東京,2010.

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世界大百科事典内の卵巣癌の言及

【卵巣腫瘍】より

…卵巣を形成しているおもな細胞,組織には表層上皮,卵細胞(胚細胞),性索間質(顆粒膜,莢膜細胞),間質(結合組織)などがあるが,これらがそれぞれ腫瘍化しうる。表層上皮の腫瘍化したものには卵巣囊腫や卵巣癌などがあり,最も発生頻度が高く,卵巣腫瘍全体の約2/3を占める。卵細胞の腫瘍化は一般に,20歳前後の比較的若い人に発生することが多い。…

※「卵巣癌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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