日本大百科全書(ニッポニカ) 「白ロシア語」の意味・わかりやすい解説
白ロシア語
はくろしあご
Belorussiyan
ベラルーシ共和国の国語。ベラルーシ語あるいはベロルシア語ともいう。言語人口は約712万(1989年人口調査による白ロシア人約1004万人のうち白ロシア語を母語とする者の数)。隣接のロシア語、ウクライナ語とともにスラブ語派の東スラブ語群を構成する。白ロシア語の方言特徴をもつ文献は13世紀以後出現する。13~14世紀に白ロシア語は大リトアニア公国の公用語となり、文章語としての発達を促された。16世紀に白ロシア文章語は、白ロシアの印刷術の創始者で啓蒙(けいもう)主義者のフランツィスク・スコリーナ(1490ころ―1541ころ)の活発な文書活動により新たなる伸展をみた。しかし、1696年にポーランド国会が公用語としての白ロシア語の使用を禁止したために、文語の伝統は断絶された。1795年に白ロシアがロシアに再統合されてからは、白ロシア人の民族意識の高揚とともに、生きた口語に基づいた新しい文章語の建設が試みられ、19世紀前半に今日に至る現代白ロシア標準文語の基礎が築かれた。
白ロシア語は、音声面では、アクセントのないoがaと発音され、前舌母音の直前で子音が口蓋(こうがい)化し、無声子音の直前および語末で有声子音が無声化する点ではロシア語と同様であるが、дがдз、тがцと発音され、рがつねに硬音であり、л、вがに移行する(волк―вок「狼」、кровь―кро「血」)点がロシア語と異なる。形態面の特徴としては、女性名詞の格変化においてг~з、к~ц、х~сの音韻交替があり(рука「手」~руцэ「手に」)、動詞の現在三人称単数の語尾にтがない(чытае「読む」)。
[栗原成郎]