翻訳|Ukrainian
インド・ヨーロッパ語族スラブ語派の東スラブ諸語に属し,ロシア語およびベラルーシ語と系統上最も近い関係にある。ウクライナを中心とする旧ソ連領内,ポーランドやスロバキアなどの東欧諸国およびアメリカ,カナダなどに主として分布するウクライナ語人口は4400万を超え(1979),スラブ語中でロシア語に次ぐ勢力を有する。東スラブ人は9世紀末にキエフを中心とする統一国家を形成し,10世紀末にキリスト教(正教)を受容してから言語文化の統一を進め,共通の文語〈古期ロシア語〉による豊富な文献を遺した。14世紀後半以降ポーランドの支配下にあった南西ロシアの言語とモスクワの大ロシア語との分化が進行し,17世紀中ごろまでにウクライナ語,ベラルーシ語,ロシア語の差は決定的となった。現代文語の主要規範は詩人T.G.シェフチェンコ(1814-61)によって確立されるが,ロシア帝政期にはその教育や公的使用が禁じられ,1917年の革命後初めて独立の国語として正書法,語彙,文法の標準化が進められた。北,南西,南東の3方言のうち,標準語の規範を与えているのは南東方言である。ロシア語との主要な相違点は,(1)字母i[i],ï[ji],[je],(2)音声表記的正書法,(3)古期ロシア語のo,eに対応する閉音節のi-нiс〈鼻〉(単数主格<носъ),нiс〈持って来た〉(過去男性形<несъ),(4)名詞変化呼格の残存-Петре,(5)名詞男性第2変化単数与格の語尾-овiの残存-братовi,(6)動詞第1変化現在単数三人称の語尾は-тьを欠く-зна,пише,(7)動詞現在複数一人称の語尾は-oを伴う-знамо,(8)古い合成未来に基づく未来変化,роботиму,роботимеш……の形成(合成未来буду роботи,будеш роботи……も併用される)など。
執筆者:佐藤 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウクライナの言語。ウクライナ国内に約400万の言語人口をもつ。隣接のロシア語、白ロシア語とともにスラブ語派の東スラブ語群を形成する。13世紀中葉までは共通東スラブ語的性格を有していたキエフ・ロシア(キエフ・ルーシ)の文章語である古代ロシア語の伝統を継承しながらも、ポーランド語の強い影響を受け、ウクライナ諸方言の口語要素も吸収しながら、17世紀から19世紀にかけて漸次独自の文語を発達させた。19世紀の詩人コトリャレーフスキーIvan Kotlyarevskii(1769―1838)、シェフチェンコらの作品は現代ウクライナ標準文語の基礎の形成に貢献した。主要な言語的特徴は、(1)前舌母音のiと、より後舌的なиとを区別する、(2)古代ロシア語のがiとなり(дто‐лiто「夏」)、ыとиが一つの母音иとなる(риба「魚」、сила「力」)、(3)古代ロシア語の子音の直前のлおよび動詞過去形のлがв([w])になる(вовк「狼(おおかみ)」、ходив「行ってきた」)、などである。
ロシア語とのおもな相違は、(1)名詞に呼格があること(Петре「ペトロよ」)、(2)男性名詞に単数与格語尾‐овi, ‐евiをもつものがある(братовi「兄に」)、(3)動詞現在三人称に語尾‐тьがないこと(знаэ「彼は知る」)などである。
[栗原成郎]
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