改訂新版 世界大百科事典 「皇越律例」の意味・わかりやすい解説
皇越律例 (こうえつりつれい)
グエン(阮)朝ベトナムの中国式法典。ザロン(嘉隆)帝は1802年即位してグエン朝を開創するや,積極的に当時の清朝の行政制度の移入をはかった。法典においても旧来の唐律・明律にベトナム固有法を加味したレ(黎)朝刑律を廃棄して,12年に全390条,22巻からなる皇越律例を定めた。その内容はほとんど清代法典の直写にすぎず,固有法の面影はほとんどないといわれる。したがって,この律例がグエン朝期に実際に機能したとは考えられない。しかしフランス植民地期には植民地統治のための在来法として注目され,1909年P.L.F.フィラストルがその全文を《Le code annamite》として訳出し,また18年にはこれをフランス法によって改訂した皇越新律がトンキン保護領に公布された。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報