益州名画録(読み)えきしゅうめいがろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「益州名画録」の意味・わかりやすい解説

益州名画録
えきしゅうめいがろく

中国の美術書。唐(とう)末五代(10世紀前半)の益州四川(しせん)省成都)で活躍した画家たちの伝記。全3巻。宋(そう)の黄休復の撰(せん)。中唐以後、益州の地は比較的社会秩序がよく保たれ、経済的にも恵まれたため、戦乱を逃れてこの地に移住してくる知識人が多く、一大文化の中心を形成した。本書は58人の画家をあげ、画格優劣を逸、神、能、妙の4格に分類し、小伝を付して論評している。正統的画法から逸脱した画家に最高の評価を与えていることが注目されるが、寺院壁画に関する記述などとくに興味深い。

吉村 怜]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「益州名画録」の意味・わかりやすい解説

益州名画録
えきしゅうめいがろく
Yi-zhou-ming-hua-lu

唐代の乾元年間 (758~60) から北宗の乾徳年間 (963~68) までの,益州 (成都) で活躍した画家の略伝とその画蹟を著わしたもの。北宗初期,黄休復の撰。蜀に長く滞在した撰者が,画家 58人を逸,神,妙,能の4品に分け,実見した画蹟を中心に論評を加えている。唐末から北宗初にかけて,中原動乱に伴い移植された中央の画風の蜀地における保存と展開のさまを知るうえで重要な一書。『画史叢書』などに所収。

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