盟三五大切(読み)かみかけてさんごたいせつ

改訂新版 世界大百科事典 「盟三五大切」の意味・わかりやすい解説

盟三五大切 (かみかけてさんごたいせつ)

歌舞伎狂言世話物。2幕6場。4世鶴屋南北作。1825年(文政8)9月江戸中村座初演。配役は薩摩源五兵衛実は不破数右衛門・家主弥助を5世松本幸四郎,船頭笹野屋三五郎を7世市川団十郎,芸者妲妃の小万を2世岩井粂三郎(のちの6世岩井半四郎)など。題材は1737年(元文2)に大坂曾根崎で起きた薩摩藩士の5人斬り事件で,初世並木五瓶が94年(寛政6)に書いた《五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)》と,これを本人が改作した《略三五大切(かきなおしてさんごたいせつ)》とを基にした書替えである。《東海道四谷怪談》の次の興行なので,その後日譚とし,同様に《忠臣蔵》に関係づけた。塩冶浪士不破数右衛門は薩摩源五兵衛と名のり,仇討参加に必要な百両の調達に苦心しつつも,芸者小万と深い仲である。小万には三五郎という情夫があり,彼は父了心から主筋の人のためと百両の工面を頼まれ,小万と共謀し,源五兵衛が伯父からもらった大事の百両をだまし取る。だまされたのに気づいた源五兵衛は小万を探し出して惨殺する。父に頼まれた百両が実は源五兵衛に貢ぐための金だったと知った三五郎は自殺し,源五兵衛の数右衛門は討入に出立する。全体的にまとまりが良く,特に大詰〈鬼横町の場〉は南北らしい笑いと残酷美に富んで傑出している。初演時も作の評価は高かったが,役者不足と陰惨さのため客の入りは少なかった。近年,改めて脚光を浴びている。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「盟三五大切」の解説

盟三五大切
かみかけて さんごたいせつ

歌舞伎浄瑠璃外題
作者
鶴屋南北(4代)
初演
文政8.9(江戸・中村座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の盟三五大切の言及

【五大力恋緘】より

… 五瓶はこの翌年正月江戸都座の《江戸砂子慶曾我(えどすなごきちれいそが)》二番目に本作を江戸向けに改訂して上演し,以後上方系とヒロインの名を小万とする江戸系の2種がそれぞれ上演を繰り返した。1806年(文化3)正月には五瓶自身による改作《略三五大切(かきなおしてさんごたいせつ)》が,25年(文政8)9月には4世鶴屋南北作《盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)》が上演されるなど,後世への影響は大きい。おまん源五兵衛物【松崎 仁】。…

【鶴屋南北】より

…幕府当局からの狂言差止めは1812年(文化9)1月市村座《色一座梅椿(いろいちざうめとしらたま)》でも惹起し,その年中不当りが続いたが,翌13年3月森田座での《お染久松色読販(うきなのよみうり)》(半四郎のお染の七役)は大当りを占めた。 後期の代表作には,半四郎の〈女清玄〉の《隅田川花御所染(すみだがわはなのごしよぞめ)》(1814年3月市村座),お六・八ッ橋(二役,半四郎)と願哲(幸四郎)の《杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)》(1815年5月河原崎座),公卿の息女が宿場女郎に転落した巷説を舞台化した《桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしよう)》(1817年3月河原崎座),俳優の日常生活を舞台化した〈世話の暫〉の《四天王産湯玉川(してんのううぶゆのたまがわ)》(1818年11月玉川座),菊五郎,幸四郎の亀山の仇討《霊験亀山鉾(れいげんかめやまぼこ)》(1822年8月河原崎座),菊五郎,半四郎,団十郎の不破名古屋と権八小紫の《浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなずま)》(1823年3月市村座),清元《累(かさね)》を含む《法懸松成田利剣(けさかけまつなりたのりけん)》(1823年6月森田座),その最高傑作である《東海道四谷怪談》(1825年7月中村座),深川五人斬事件を劇化した《盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)》(1825年9月中村座),また番付にみずから一世一代と銘うった最後の作《金幣猿嶋郡(きんのざいさるしまだいり)》(1829年11月中村座)などがある。その年11月27日没し,葬礼に際しては《寂光門松後万歳(しでのかどまつごまんざい)》と題する正本仕立ての摺物を配らせ,自分の手で死を茶化した。…

※「盟三五大切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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