工面(読み)クメン

デジタル大辞泉 「工面」の意味・読み・例文・類語

く‐めん【工面】

[名](スル)《「ぐめん」とも》
いろいろ手段方法を考えて手はずを整えること。特に、なんとか工夫して金銭を用意すること。算段。「旅費工面する」
金回り。ふところぐあい。
「―のいい馴染に逢って、ふもとの山寺に詣でて鹿の鳴声を聞いた処」〈鏡花・眉かくしの霊〉
相談談合
「扨母の心も休めたく、此の亭主に―し」〈浄・天の網島
[類語]やりくり切り盛り金繰り都合捻出算段まかなう繰り合わせ融通

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「工面」の意味・読み・例文・類語

く‐めん【工面】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「ぐめん」とも )
  2. 物事の手段、方法に関する工夫。算段。才覚
    1. [初出の実例]「はやしよくくめんをやり、ゆだんなく心得べし」(出典:八帖花伝書(1573‐92)七)
    2. 「早く好い御嫁さんでも貰って別に成る工面(クメン)を御為(おし)よ」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉帰ってから)
  3. ( ━する ) 相談。談合。
    1. [初出の実例]「兎角ぐめんもことによる。はや請出して行と聞、今になっての評定一里さがっての分別」(出典:浮世草子・御前義経記(1700)七)
  4. ( ━する ) 工夫して金銭や物を集めること。算段。
    1. [初出の実例]「気を揉んでももがいても、身は裸なり、ぐめんはならず」(出典:浄瑠璃・生玉心中(1715か)上)
  5. ( の意から ) 財政状態。金まわり。身代。多く「良い」「悪い」を伴って用いる。
    1. [初出の実例]「やろうめらア工面(クメン)がゑいから、すきなものをきやアがる」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)二上)

工面の語誌

( 1 )近世は「ぐめん」と発音され、表記も仮名表記をとることが多かったが、後期の江戸では「くめん」と清音であった。
( 2 )大言海」では「工夫面倒」の略とするが、意味による当て字的な表記と思われる。本来は手段や方法を工夫する意であったが、のち、のような金銭面での使用に特定された。

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