新潟県佐渡(さど)市北西部、旧相川町を中心に歌われてきた民謡。江戸時代の寛文(かんぶん)末期(1670ころ)におこった盆踊り唄(うた)で、初めは『謡曲(うたい)百番くずし』といい、謡曲の曲名を懸詞(かけことば)にしたり、『おさん仙次郎心中濃茶染(こいちゃぞめ)』のように、心中物や恋物語をテーマにして歌い込んだりしていた。約140年のちの文政(ぶんせい)・天保(てんぽう)年間(1818~1844)になると、尚武の世相の影響で勇ましい歌詞が喜ばれるようになり、現在歌われている源平合戦を描写した5段の口説(くどき)調となった。初段「宇治川先陣」、2段「巴(ともえ)の勇戦」、3段「那須与市扇(なすのよいちおうぎ)の的(まと)」、4段「継信(つぐのぶ)の死」、そして5段の途中からがよく歌われている「どっと笑うて立つ浪風(なみかぜ)の 荒き折節(おりふし)義経(よしつね)公は……」のくだりの「義経弓流し」である。相川金山に江戸幕府の奉行所が置かれたころ、毎年7月15日の盆に、その奉行所の前でこの『相川音頭』が踊られたことから「御前踊り」とよばれるようになった。『佐渡おけさ』とともに佐渡の代表的な唄である。
[斎藤 明]
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