真善美(読み)シンゼンビ(英語表記)d. Wahre, d. Gute, d. Schöne ドイツ語

デジタル大辞泉 「真善美」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぜん‐び【真善美】

認識上の真と、倫理上の善と、審美上の美。人間理想としての普遍妥当な価値をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「真善美」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぜん‐び【真善美】

  1. 〘 名詞 〙 認識上の真と、倫理上の善と、審美上の美。理想を実現した最高の状態をいう。この三つは、それぞれ論理学・倫理学美学という独立の学の主題であるとみられる場合もあるし、また、価値論で、相互に関連し合った統一的な価値とみられることもある。
    1. [初出の実例]「かくてなほあくがれますか真善美わが手の花はくれなゐよ君」(出典:みだれ髪(1901)〈与謝野晶子〉はたち妻)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真善美」の意味・わかりやすい解説

真善美
しんぜんび
d. Wahre, d. Gute, d. Schöne ドイツ語

知性(認識能力)、意志(実践能力)、感性(審美能力)のそれぞれに応ずる超越的対象が真善美である。このうち、知性の対象を真とし、意志の対象を善として併置することは西欧古代、中世の哲学的伝統であった。またギリシアでは、美と善とは合して、「美にして善なるもの」kalokagathonという合成語となり、自然的、社会的、倫理的な卓越性をさすことばであった。しかし、真善美の三者が併置されるようになったのは、おそらく近代になってからのことで、直接にはカント哲学の影響によるものであると考えられる。カント哲学の紹介者であったフランスの講壇哲学者クーザンには、『真美善について』Du vraie, du beau et du bien(1853)という著作があり、カント哲学の復興であったドイツの新カント学派では、「真善美」d. Wahre, d. Gute, d. Schöneはその哲学の常套(じょうとう)語となった。日本へのこの語の移入は、おそらく新カント学派の影響によるものと考えられる。

[加藤信朗]

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