日本大百科全書(ニッポニカ) 「着圧ウエア」の意味・わかりやすい解説
着圧ウエア
ちゃくあつうえあ
機能性衣料の一種。締め付ける圧力を足首、ふくらはぎ、膝(ひざ)、腹部、胸部など身体の部位ごとに調整して段階的に変えることで、身につけると疲労軽減や運動能力向上などの効果が期待できるとする衣類で、コンプレッションウエアcompression wear、加圧ウエアともよばれる。着圧とは、衣服圧ともいい、衣服を着用したときに身体に加わる圧力のことをいう。着圧ウエアには、ストッキング、タイツ、スパッツ、ソックス、シャツ、ボディースーツ、下着などさまざまな種類があり、身体にぴったりと張り付く特性をもつ。身体の末端部分の圧力を高くし、心臓のある中心部に近くなるほど圧力を緩める構造とすることで、静脈の血液やリンパの流れを促し、疲労原因となる乳酸の滞留を抑制して疲れにくくすると説明されている。また身体に密着することで、むだな筋肉の揺れを抑え、運動に最適な姿勢に矯正することができ、同じトレーニングをしても、より高い効果を期待できるとしている。関節部分周辺などを補強して、けがを予防する商品や、姿勢補正などの機能をうたった商品もある。素材は伸縮性に富んだポリウレタンやポリエステルなどの弾性繊維を主に使い、速乾性のある綿やシルクなどを混ぜる手法がとられている。
2000年(平成12)ころからプロスポーツ選手が着用する姿がマスコミで報じられて普及した。スポーツウエア市場が伸び悩むなか、着圧ウエア市場は消費者の健康・美容志向にのって毎年、着実に伸びているとされている。ただし2008年以降、国民生活センターに着圧ウエアを利用した消費者から「腫(は)れや痛みが出た」「神経麻痺(まひ)になった」といった相談が寄せられるようになった。このため同センターは2011年4月、着圧ストッキングを着けたまま、長時間座り続けたり、しゃがみ続けたりすると、血行障害や神経障害がおきる恐れがあると注意喚起した。
[編集部]