知財立国への最新潮流(読み)ちざいりっこくへのさいしんちょうりゅう

知恵蔵 「知財立国への最新潮流」の解説

知財立国への最新潮流

日本国内における知的財産権の創造、保護、活用の枠組みは、この5年余りで、知財立国を目指した知的財産戦略本部官民挙げての意識の向上と強力な取り組みにより、着実に整備、改善が図られつつある。知的財産高等裁判所の設立のみならず、特許審査基準の見直しによるビジネスモデル特許や医療技術特許などの容認、特許法改正を伴った職務発明規定の見直し、技術進歩、利用実態を踏まえた著作権法の改正、運用などと見直し分野は多岐にわたる。また、そうしたプロパテント(特許重視)の流れは、地域団体商標制度の導入や種苗法の保護強化など、地方や農林水産分野へも広がりを見せている。 同時に、こうした日本国内での諸改革は、経済のグローバル化と世界的なプロパテントの潮流を反映したものでもある。知的財産権が付随した商品やサービスは国際的規模で大量かつ活発に取引されており、円滑な取引のためには、統一した国際的ルールが不可欠である。すでに原則論としてはパリ条約ベルヌ条約などの国際的コンセンサスはあるが、個別論では、各国の産業政策とも絡んだ国家主権の壁でなかなか利害調整が図れず、いかに調和を図るかが課題となっている。日米欧三極間では特許相互承認への動きがあるが、WTOを軸とした世界特許実現は先行きが見えず、制度不備を突いた模倣品海賊版氾濫横行による被害も引き続き甚大である。

(桜井勉 日本産業研究所代表 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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