改訂新版 世界大百科事典 「硫化クロム」の意味・わかりやすい解説
硫化クロム (りゅうかクロム)
chromium sulfide
クロムと硫黄の化合物で,次に示す5種類が知られている。
硫化クロム(Ⅱ)
化学式CrS。塩化クロム(Ⅱ)無水和物を600℃で硫化水素と反応させるか,金属クロムと硫黄を1:1に混合し,真空中1000℃で長時間加熱して得られる。またクロムとアルミニウムの混合物に硫化水素を反応させてAl2CrS4とし,これを硝酸と反応させると黒色結晶として得られる。黒灰色粉末で,六方晶系柱状晶をなす。融点1550℃(1350℃で分解が始まる)。比重4.09。低温では不安定。水素と1200℃で加熱しても還元されない。強い酸化剤により酸化される。
その他の硫化物
クロムと硫黄をモル比7:8に混合し,真空中で1日加熱してから冷却するとCr7S8が得られ,同様の方法でCr5S6,Cr3S4,Cr2S3などが得られる。Cr7S8は三方晶系,比重4.30。Cr5S6は三方晶系,比重4.26。フェリ磁性。Cr3S4は単斜晶系。Cr2S3は褐色。三方晶系,比重3.972,あるいは斜方晶系,比重3.922の2種がある。常磁性。室温では空気中で安定。硝酸,王水とは容易に反応する。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報