硫化マンガン(読み)りゅうかマンガン(英語表記)manganese sulfide

改訂新版 世界大百科事典 「硫化マンガン」の意味・わかりやすい解説

硫化マンガン (りゅうかマンガン)
manganese sulfide

マンガンと硫黄の化合物で,おもなものは一および二硫化物である。

化学式MnS。α,β,γの3変態がある。マンガン(Ⅱ)塩の水溶液硫化アンモニウムを加えて得られる淡紅色の沈殿はβ形とγ形の混合物で多量の水を含む。これを硫化アンモニウム水溶液中に放置すると緑色のα形となる。α形は天然にセンマンガン鉱として産する。緑色結晶。立方晶系。塩化ナトリウム型構造。比重3.99。融点1610℃(真空中)。β形は赤色粉末。立方晶系。セン亜鉛鉱型構造。γ形は淡赤色の粉末。六方晶系。ウルツ鉱型構造。いずれも塩酸に溶け,水酸化カリウム溶液と煮沸すると水酸化マンガン(Ⅱ)を生ずる。

化学式MnS2。天然にハウエル鉱として産する。硫酸マンガン(Ⅱ)水溶液をK2Sxと少量の硫黄とともに封管中で240℃に加熱すると得られる。赤褐色結晶。立方晶系。黄鉄鉱型構造でMn2⁺とS22⁻とから成る。比重3.463。加熱すると容易に硫黄を放つ。塩酸に溶ける。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「硫化マンガン」の解説

硫化マンガン
リュウカマンガン
manganese sulfide

硫化マンガン(Ⅱ)MnS,二硫化マンガン(Ⅳ)MnS2が知られている.【】硫化マンガン(Ⅱ)(manganese(Ⅱ) sulfide):MnS(87.00).一硫化マンガン(manganese monosulfide)ともいう.α,β,γの3変態がある.
(1)α形;天然にはせんマンガン鉱(alabandite)として産出する.少量のシュウ酸カリウム存在下,塩化マンガン(Ⅱ)水溶液を沸騰させ,やや過剰のアンモニア水を加え,熱時硫化水素を通じると得られる.緑色の立方晶系結晶.塩化ナトリウム型構造.Mn-S0.261 nm.密度4.05 g cm-3.融点1620 ℃.反強磁性である.
(2)β形;酢酸マンガン(Ⅱ)水溶液に,冷時硫化水素を通じると得られる.赤色の粉末.立方晶系結晶.せん亜鉛鉱型構造.Mn-S0.243 nm.密度3.27 g cm-3
(3)γ形;塩化マンガン(Ⅱ)水溶液を煮沸し,塩化アンモニウムを加え,硫化水素を通じながら,ときどきアンモニア水を加えて沈殿させると得られる.淡赤色の粉末.立方晶系結晶.ウルツ鉱型構造.Mn-S0.241 nm.密度3.26 g cm-3.700 ℃ でp型半導体
βおよびγ形はかなり不安定で,200~300 ℃ で安定なα形になる.いずれも空気中では不安定で,βおよびγ形はすみやかに酸化される.また,3態とも水に不溶で,酸には硫化水素を発生して溶ける.[CAS 18820-29-6]【】硫化マンガン(Ⅳ):MnS2(119.07).二硫化マンガン(manganese disulfide)ともいう.天然にはハウエル鉱(hauerite)として産出する.硫酸マンガン(Ⅱ)水溶液に多硫化カリウムと硫黄を加え,封管中で加熱すると得られる.黒褐色の立方晶系結晶.密度3.463 g cm-3.黄鉄鉱型構造.Mn-S0.259 nm,S-S0.209 nm.加熱すると分解して硫黄を放出する.塩酸と反応して塩化マンガン(Ⅱ)を生じる.反強磁性である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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