日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウエル鉱」の意味・わかりやすい解説
ハウエル鉱
はうえるこう
hauerite
二硫化マンガンの鉱物。一時、方マンガン鉱という和名もあったが、閃(せん)マンガン鉱(alabandite, MnS)も等軸晶系であるため不適当とされ、現在は用いられない。黄鉄鉱系。黄鉄鉱と同構造であるが、ほとんど固溶体をつくらない。自形は正八面体を基調とし、これに立方体の面が加わることもある。噴気性鉱床、噴気性堆積(たいせき)鉱床、粘土質堆積岩、変質火山岩・火砕岩中に産する。日本では青森県むつ市恐山(おそれざん)での噴気作用に伴われる生成物として産する。
共存鉱物は自然硫黄、鶏冠石(けいかんせき)、石膏(せっこう)、方解石、粘土鉱物など。同定は暗赤褐色、わずかに光を通す外観。黄鉄鉱系ではあるが、三方向、立方体の面に完全な劈開(へきかい)。空気中で暗褐灰色に錆び、光沢を失う。褐赤色の条痕(じょうこん)。低い硬度。命名はオーストリアの地質学者ヨゼフ・リッター・フォン・ハウエルJoseph Ritter von Hauer(1778―1863)と息子フランツ・フォン・ハウエルFranz von Hauer(1822―1899)にちなむ。
[加藤 昭]