硫酸マンガン(読み)りゅうさんマンガン(その他表記)manganese sulfate

改訂新版 世界大百科事典 「硫酸マンガン」の意味・わかりやすい解説

硫酸マンガン (りゅうさんマンガン)
manganese sulfate

マンガンの硫酸塩で,マンガンの酸化数Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの化合物が知られている。

化学式MnSO4。無水和物および1,4,5,7水和物が知られている。1および7水和物はそれぞれ天然にスズミカイトszmikiteおよびマラーダイトmallarditeとして産する。無水和物は水和物を280℃に加熱すると得られる。白色塊,斜方晶系。融点700℃。850℃で分解する。比重3.235。水に対する溶解度53g/100g(0℃)。水酸化マンガン(Ⅱ)Mn(OH2あるいは炭酸マンガン(Ⅱ)MnCO3を硫酸に溶かし蒸発すると,27℃以上で1水和物,9~27℃で5水和物,-4~9℃で7水和物が得られる。また,5水和物を真空にした濃硫酸デシケーター中で乾燥すると4水和物が得られる。1水和物は淡赤色粉末単斜晶系。比重2.87。水に対する溶解度98.5g/100g(48℃)。4水和物は淡赤色結晶,単斜晶系。比重2.107。ほかに斜方晶系の変態もある。水に対する溶解度136g/100g(16℃)。5水和物は淡赤色の結晶,三斜晶系。相当する銅塩CuSO4・5H2Oと同形。比重2.103(15℃)。水に対する溶解度142g/100g(5℃)。7水和物は淡紅色結晶,単斜晶系および斜方晶系。鉱物は単斜晶系。風解しやすい。比重2.092。水に対する溶解度176g/100g(0℃)。ペンキおよび印刷インキの乾燥剤,窯業用顔料,染色防錆(ぼうせい)剤,肥料等に用いられる。

化学式Mn2(SO43。無水和物のみが知られている。過マンガン酸カリウムKMnO4に濃硫酸を作用させると得られる。暗緑色粉末。潮解性。比重3.24。水で分解する。酸化剤として用いられる。

化学式Mn(SO42。硫酸酸性MnSO4溶液にKMnO4を加えると黒色粉末が得られ,硫酸マンガン(Ⅳ)であるといわれている。50~80%H2SO4に冷時,深褐色となって溶けるが,希釈すると分解する。酸化剤として用いられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「硫酸マンガン」の解説

硫酸マンガン
リュウサンマンガン
manganese sulfate

】硫酸マンガン(Ⅱ):MnSO4(151.00).二酸化マンガン希硫酸に溶かして蒸発すると得られる.淡桃色の結晶.蒸発温度により次のように種々の水和物を与える.9 ℃ 以下で七水和物,9~26 ℃ で五水和物,26~27 ℃ で斜方晶系の四水和物,27 ℃ 以上で一水和物.280 ℃ 以上に加熱すると無水物となる.無水物は白色の塊状.密度3.23 g cm-3.融点700 ℃.850 ℃ で分解する.水に易溶,エタノールに可溶.市販品は四水和物が普通である.四水和物は淡桃色の結晶.密度2.11 g cm-3.水に易溶,エタノールに不溶.乾燥剤,窯業用顔料,金属のさび止め,媒染剤ペイント,排煙脱硫剤,農薬の原料,肥料などに用いられる.[CAS 7785-87-7:MnSO4][CAS 10034-96-5:MnSO4・H2O][CAS 10101-68-5:MnSO4・4H2O][CAS 15244-36-7:MnSO4・5H2O]【】硫酸マンガン(Ⅲ):Mn2(SO4)3(398.07).酸化マンガン(Ⅳ)一水和物または過マンガン酸カリウムを濃硫酸に溶かして生じるMn2(SO4)3・H2SO4・H2Oを熱すると得られる.暗緑色の粉末.密度3.24 g cm-3.160 ℃ 以上で分解する.水に溶かすと赤色の溶液となるが加水分解してMn(OH)3を沈殿する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸マンガン」の意味・わかりやすい解説

硫酸マンガン
りゅうさんまんがん
manganese sulfate

マンガンの硫酸塩。酸化数ⅡとⅢの塩が普通に知られる。

(1)硫酸マンガン(Ⅱ) 化学式MnSO4、式量151.0。水酸化マンガン(Ⅱ)または炭酸マンガン(Ⅱ)を硫酸に溶かした溶液から、0℃付近で七水和物、9~27℃で五水和物、27℃以上で一水和物の結晶が得られる。いずれもほとんど無色に近い淡赤色の単斜晶系結晶。熱すると400℃で無水和物となる。無水和物は淡赤色。融点700℃。比重3.23。850℃で分解する。水、エタノール(エチルアルコール)に溶ける。53g/100g(0℃)。七水和物MnSO4・7H2Oは淡紅色結晶。天然にはマラーダイトmallarditeとして産する。塗料、印刷インキの乾燥剤原料、窯業用顔料(リン酸マンガン)の製造、金属表面処理剤などの用途がある。

(2)硫酸マンガン(Ⅲ) 化学式Mn2(SO4)3、式量398.1。過マンガン酸カリウムと濃硫酸とを注意深く反応させて得る(爆発しやすい)。緑色結晶で、潮解性。比重3.24。水で加水分解するが、塩酸、希硫酸に溶ける。酸化剤としての用途がある。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸マンガン」の意味・わかりやすい解説

硫酸マンガン
りゅうさんマンガン
manganese sulfate

(1) 硫酸マンガン (II)   MnSO4 。1,4,5および7水塩が知られているが,常温付近で安定なのは5水塩である。マンガンの水和物はいずれも美しいばら色を呈するが,400~450℃で脱水し,無水物となる。染色,赤色釉,ブドウやタバコの肥料などとして用いられる。 (2) 硫酸マンガン (III)   Mn2(SO4)3 。暗濃緑色の粉末であるが,熱するとすみやかに分解して無色の硫酸マンガン (II) に変る。酸性塩 Mn2(SO4)3・H2SO4・4H2O も知られており,過マンガン酸カリウムと濃硫酸から得られる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android