複数の社債を一つに束ねて、これを担保資産(責任財産、裏付け資産)として発行する証券。資産担保証券の一種である。略称CBO。業種や格付けの異なる複数の社債を特別目的会社に集め、各社債が生み出す利払いや償還金を元に、格付けの異なる複数の証券に組み替えて発行するのが一般的である。組成後の高格付け債を「シニア債」、中格付け債を「メザニン債」、低格付け債を「ジュニア債」とよぶ。利払いや元本償還はシニア債、メザニン債、ジュニア債の順番に行われるが、格付けが低くなるほど利回りは大きくなる。組成にあたっては、新規発行の社債を利用する場合(プライマリー市場での調達)と、既発行の社債を利用するケース(セカンダリー市場での調達)がある。複数の社債をひとまとめにしてリスクを分散できるため、通常、信用力が低く単独社債発行できない中小・中堅企業にも社債発行で資金調達の道を開く手法として注目された。高格付け企業にとっても、単独発行より発行条件が向上するという利点がある。
アメリカで1980年代から発行が始まり、日本でも1990年代後半以降、相次いで発行されるようになった。IT(情報技術)バブル崩壊後には、当時の東京都知事であった石原慎太郎が中小企業の資金繰りを支援する「東京都債券市場構想」を提唱。その一環として東京都や大阪府、横浜市などの地方自治体が2006年(平成18)以降、数百社から1000社を超える中小・中堅企業の社債を束ねた社債担保証券「広域CBO」を発行した。しかしリーマン・ショックのあおりで、2009年と2010年に広域CBOの一部が元利金を返還されない債務不履行(デフォルト)に陥った。以降、日本では社債担保証券の発行はほとんど行われておらず、企業が単独で資金調達する単独社債発行が主流となっている。
[矢野 武]
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