改訂新版 世界大百科事典 「祝福芸」の意味・わかりやすい解説
祝福芸 (しゅくふくげい)
祝福の唱え言や言い立て,ほめ詞などを内容とする芸能。古代には〈ほかいびと〉(ほかい)と呼ばれ,家々の門(かど)に立って祝言を述べ,その代償として物を乞う存在があった。中世になると千秋万歳(せんずまんざい),物吉(ものよし),松囃子などといった祝言職が現れ,年の初めに禁中や諸寺,諸家に伺候して祝福の芸を演じ,また村々をめぐり歩いた。江戸時代になると祝言職の種類がさらに増え,万歳,節季候(せきぞろ),うばら,つるそめ,えびす舞,大黒舞,太神楽,春駒,鳥追などと多種多様になり,年末から年始にかけて諸国をめぐり歩き,訪問先で祝福芸を演じて生活の糧を得た。このような祝言職とは別に,村の中から選ばれた若者や子どもたちが,年末年始や小正月に連れ立って家々を訪問し,祝言を唱えたり,厄払いをする行事が全国的に分布している。よく知られているものに秋田県男鹿市のなまはげ(現在は12月31日),福島県や山形県などのカセドリ,岡山県のコトコト,鳥取県のホトホトなどがある。ホトホトは小正月の夜,遠来の神人がホトホトと音をさせて家々を訪れ,一年を祝福するのだという。
執筆者:中村 茂子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報