万歳(読み)まんざい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

万歳
まんざい

日本音楽の曲名。民俗芸能の万歳を素材としたもの。 (1) 地歌では城志賀作曲の二上り端歌物が代表的。前半には,大和万歳の「柱立て」および「えびす舞」の歌を用い,後半には禁中万歳歌 (千秋万歳) から出たとも,あるいは蓮如上人の作とも伝えられる子守歌『優女 (やしょめ) 』から出たともされる,やはり大和万歳の『京之町』によっている。鼓に合せて行う動きを表現した旋律は類型化し,他の万歳物の曲に転用されている。類曲に『御堂万歳』などがあり,替え歌も作られ,『歌系図』には,流石庵羽積作の『郭まんざい』が収録されている。 (2) (1) の三弦の替手は菊岡検校らによって作られたが,箏の手も各地で種々作曲され,ことに化政期 (1804~30) 頃に大坂の市浦検校が作曲したものは,オランダ渡来のオルゴールからヒントを得た特殊な調弦 (オランダ調子またはオルゴル調子 ) により,『和蘭陀万歳』といわれ,箏が替手式に三弦に合される曲の最初の曲といわれる。 (3) 山田流箏曲。1世中能島松声作曲による中歌曲。箏は半雲井調子-四上り平調子。三弦は本調子-二上り。 (4) 長唄。天保 13 (42) 年1月江戸河原崎座初演の2世尾上多見蔵五変化所作事『松朝霞彩色 (まつのあしたかすみのいろどり) 』の一つで,杵屋三五郎作曲と思われる。 (5) 常磐津節の『乗合船恵方万歳 (のりあいぶねえほうまんざい) 』の俗称。

万歳
まんざい

門付芸 (かどづけげい) の一つ。正月に家々を訪れ祝言を述べて米や銭を請う。平安時代末から室町時代には千秋万歳 (せんずまんざい) といい,唱門師などが業とすることがあった。三河万歳は江戸幕府開府の当時から出府したので広く知られた。太夫は風折烏帽子素襖高下駄をはき,これと組んで回る才蔵大黒頭巾にたっつけ姿で,鼓を持っている。今日も行われている万歳には三河,大和をはじめ尾張,河内,秋田万歳などがある。

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デジタル大辞泉の解説

ばん‐ざい【万歳】

[名](スル)《古くは「ばんぜい」。「ばんざい」は近代以降の読み方》
祝いや喜びの気持ちを込めてを唱えること。多く、威勢よく両手を上げる動作を伴う。また、その動作のこともいう。「万歳を三唱する」「万歳の姿勢」
めでたいこと。うれしいこと。「これが成功すれば万歳だ」
1の動作から》
㋐降参すること。お手上げ。「もう食べられない。万歳するよ」
㋑野球で、野手がフライを捕球しようとして両手を上げながら、打球に頭上を抜かれること。→ばんぜい(万歳)
[感]めでたいときやうれしいときに、その気持ちを込めて発する語。「万歳、合格だ」

ばん‐ぜい【万歳】

長い年月。万年。「千秋万歳
いつまでも生きること。また、永く栄えること。
「君天下を保たせ給はん事、―是より始まる可し」〈太平記・二八〉
めでたいこと、寿命などを祝福して唱える語。ばんざい。
「―の喜びをぞ唱へける」〈曽我・五〉

まん‐ざい【万歳】

万年。よろずよ。また、長寿や末長い繁栄を祝う言葉。ばんぜい。ばんざい。
新年に家々を訪れて祝言を述べ、舞を演じる門付け芸人。また、その芸能。烏帽子(えぼし)直垂(ひたたれ)または素襖(すおう)姿で扇を持った太夫(たゆう)と、大黒頭巾(だいこくずきん)たっつけ姿で鼓を持った才蔵の二人一組が普通。千秋万歳(せんずまんざい)に始まる。のち、こっけいな掛け合いをする寄席の芸にもなった。太夫の出身地により三河万歳尾張万歳・秋田万歳などがある。今日の漫才のもと。 新年》「山里は―おそし梅の花/芭蕉

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百科事典マイペディアの解説

万歳【まんざい】

正月,家ごとに回って祝言をのべ,歌い舞い,祝儀を請う門付(かどづけ)芸の一種。形式は時代と土地で違うが,ふつう風折烏帽子(かざおりえぼし)に素襖(すおう)を着た太夫と,頭巾をかぶり鼓をもつ才蔵とが一組になり,家ごとに祝言をのべ,滑稽(こっけい)な掛合をし,太夫が舞い才蔵が鼓を打つ。古く鎌倉・室町時代には,陰陽師(おんみょうじ)支配下の散所(さんじょ),声聞師(しょうもじ)などの賤民の行う千秋(せんず)万歳があったが,近世になって三河万歳,大和万歳そのほか,各地に集団が生まれた。明治以後は次第に衰えたが,今日も三河,知多の万歳は正月に諸方にでかけ,また河内・尾張など各地の万歳も残っている。
→関連項目千秋万歳チョンダラー漫才

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世界大百科事典 第2版の解説

ばんざい【万歳】

長久,〈とこしえ〉の意であるとともに,死期をも指す。そして万歳の語が,歴史的に重要な意味をもつのは,慶賀歓呼の詞としてである。中国においては,西周金文にすでに〈万年無疆〉の例があるが,これは限りなく永遠の意で使われている。《詩経》の〈万寿無疆〉(〈豳風(ひんぷう)〉〈小雅〉など)は,賓客に対する万福万幸を祝すものである。戦国時代の《韓非子》顕学篇に至って祝福の詞として〈千秋万歳〉と熟した用例がみえる。

まんざい【万歳】

民俗芸能。祝福芸,門付芸(かどづけげい)の一つ。正月に家々の座敷や門口で予祝の祝言を述べたてるもので,〈千秋万歳(せんずまんざい)〉の末流と考えられる。平安時代後期成立の《新猿楽記》には〈千秋万歳之酒禱(さかほがい)〉と見え,千秋万歳はこのころすでに職能として存在していたと思われる。鎌倉時代以降には宮中をはじめ寺社,武家などの権門を訪れるようになり,室町時代の中ごろには一般の民家にも門付してまわるようになった(《臥雲(がうん)日件録》)。

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大辞林 第三版の解説

ばんざい【万歳】

〔「ばん」は漢音、「さい」は呉音〕
( 名 ) スル
「ばんざい
」を唱えること。また、唱えたくなるほどめでたいこと、嬉しいこと。 「 -を三唱する」 「この案が通れば-なのだが」
〔両手を上げる形から〕 打開の方法がないこと。困って、なるがままにまかせること。降参。お手上げ。 「もう-するしかない」
〔上げた両手が「ばんざい
」の形になることから〕 野球で、野手がフライをとろうとして目測を誤り、頭の上を越されること。
ばんぜい(万歳)」に同じ。
( 感 )
めでたい時や嬉しい時、長久を祈る時などに唱える語。多く、両手を頭上に高く振り上げる動作を伴う。 「 -、出来たぞ」
[句項目] 万歳の後

ばんぜい【万歳】

〔漢音〕
万年。長い年月。まんざい。 「天子宝算千秋-/平家 灌頂
いつまでも生きること、栄えること。めでたいこと。 「勝ちどきを作りて-の喜びをぞ唱へける/曽我 5
貴人の死。
長寿・長久を願って、また、祝福していう語。感動詞的にも用いる。 「中納言再拝し-を称し/三代実録 元慶六」 → ばんざい
[句項目] 万歳の後

まんざい【万歳】

〔呉音〕
非常に長い年月。万年。また、いつまでも生きたり、栄えたりするよう祝う語。ばんぜい。ばんざい。 「とくわかに御-と君も栄えまします/浄瑠璃・千本桜」
新年に家々を回り祝言を述べ、舞を見せる門付かどづけ芸能。風折り烏帽子えぼしに大紋の直垂ひたたれ姿の太夫たゆうが、大黒頭巾にたっつけ袴の才蔵の鼓に合わせて演ずる。江戸時代に千秋せんず万歳より興り、三河万歳・大和万歳・尾張万歳・秋田万歳などがある。 [季] 新年。 《 -や左右にひらいて松の蔭 /去来 》

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精選版 日本国語大辞典の解説

ばん‐ざい【万歳】

〘名〙 (「万歳(ばんぜい)」の慣用的な読み方)
※文明本節用集(室町中)「万歳 バンザイ
② =ばんぜい(万歳)(二)〔和英語林集成(再版)(1872)〕
※此ぬし(1890)〈尾崎紅葉〉一〇「俊次も万歳(バンザイ)を唱へぬか。万歳(バンザイ)!」
③ (万歳三唱をする際に両手を上に挙げるところから) 両手を上に挙げること。
※不在地主(1929)〈小林多喜二〉一「いきなり手と足を万歳させた」
④ (両手を挙げる形から) 事業に失敗すること。破産すること。また、一般に、進退に窮すること。おてあげ。
※野獣死すべし 復讐篇(1960)〈大藪春彦〉目には目を「バンザイをする前に、架空の債務をでっちあげておいた」
⑤ 野球で、飛球を後逸するエラーをいう俗称。
[語誌]「万歳」は呉音でマンザイ、漢音でバンゼイと読んで長い歳月を意味し、天皇の治世の長さを祝う場合などに「千秋万歳」といわれた。①の挙例の「文明本節用集」には「バンザイ」の読みが付されているが、今日普通にいわれるバンザイの形が一般化したのは近代にはいってからと考えられる。

ばん‐ぜい【万歳】

〘名〙
[一]
① 非常に長い年月。万年。ばんざい。
※続日本紀‐天平八年(736)一一月丙戌「流橘氏之殊名。万歳無窮」 〔荘子‐斉物論〕
② (━する) いつまでも生きること、栄えること。また、それをことほぎ願うこと。
※栄花(1028‐92頃)鳥辺野「御寺の僧ども、御万歳を祈り奉る」 〔南斉書‐楽志・斉世昌辞〕
③ (━する) 人が死ぬことをいう。
※兵範記‐仁平三年(1153)五月二八日「件遠忌雖入道万歳以後、依一女祖父報恩」 〔史記‐高祖本紀〕
[二] (感動詞のようにも用いる)
① 天子・国家の長久を祝して唱える語。一般に、寿命や運命を祝して唱える。ばんざい。
※家伝(760頃)上「人人喜躍、皆称万歳」 〔漢書‐武帝紀〕
② めでたいことを祝って叫ぶ声。ばんざい。
※続日本紀‐延暦七年(788)四月癸巳「雨降滂沱。群臣莫舞踏称万歳」 〔史記‐高祖本紀〕
[語誌]→「ばんざい(万歳)」の語誌

まん‐ざい【万歳】

〘名〙
① 万年。よろずよ。ばんぜい。ばんざい。万載。
※史記抄(1477)一八「亀は万歳のものぢゃほどに」
② 千秋万歳をことほぐ意で、新年を祝う歌舞。また、その歌舞をする者。鎌倉初期以来宮中に参入するものを千秋万歳(せんずまんざい)と呼び、織豊・徳川の頃には単に万歳(まんざい)と呼んだ。江戸時代、関東へ来るものは三河国から出るので三河万歳、京都へは大和国から出るので大和万歳といい、服装は、初めは折烏帽子(おりえぼし)・素袍(すおう)であったが、後には風折(かざおり)烏帽子に大紋(だいもん)の直垂(ひたたれ)をつけ、腰鼓(こしつづみ)を打ちながら賀詞を歌って舞い歩いた。《季・新年》
※俳諧・新続犬筑波集(1660)一「にほんのはじめいはふかずかずといふに 万歳のはたまたにはに春たちて〈蝠才〉」
③ ②のうたう歌。また、その曲調を浄瑠璃中にとり入れたもの。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)四「こち風音添て去年の氷を 万才 とくわかに御万歳と君もさかへまします」
④ ②の着る素袍。
※浮世草子・好色旅日記(1687)四「宮めぐりの案内禰宜子細に白きまんざいきて」
⑤ めでたいことを祝って叫ぶ声。ばんぜい。ばんざい。まんぜい。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉附録一二「路傍の観者千秋を呼び万歳(マンザイ)を唱ふ」
⑥ 大夫と才蔵の二人の芸人が滑稽な掛合をする、近世からの演芸。現代の漫才に発展した。掛合い万歳。→漫才
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「万歳(マンゼヘ)の、才蔵(せへぞう)のと、ぎっぱな男が云ふてじゃが」

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世界大百科事典内の万歳の言及

【万歳】より

…長久,〈とこしえ〉の意であるとともに,死期をも指す。そして万歳の語が,歴史的に重要な意味をもつのは,慶賀,歓呼の詞としてである。中国においては,西周の金文にすでに〈万年無疆〉の例があるが,これは限りなく永遠の意で使われている。…

※「万歳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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