狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵・和泉両流にある。ある夕暮れ,主人は太郎冠者に,来客接待用の鯉を淀へ行って求めてこいと言いつける。臆病な冠者は用心のため主人の太刀を借りて出かけるが,洛外へ出ると早くも物影におびえ,追剝(おいはぎ)と思い込んで平身低頭し,太刀を差し出して命乞いをする。ひそかに跡をつけてきた主人はこのようすを見て,太刀を取り上げ,扇で背中を打つと冠者は気絶する。主人は先に帰るが,やがて正気づいた太郎冠者は命が助かったことを喜び,帰宅すると主人に向かい,淀へ行く途中,大勢の賊と戦い,さんざんにやっつけたが,太刀が折れたのであとを見ず逃げ帰ったと,武勇談を並べ立てる。主人は,取り上げた太刀を見せて事実をすっぱぬき,なおごまかそうとする冠者を追い込む。登場するのは太郎冠者,主の2人で,太郎冠者がシテ。曲名は,偽りの腕力自慢の意の〈空腕立て〉からきている。中心部分はシテの仕方話によるひとり舞台で,技術本位の狂言。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。暮れ方、主人は太郎冠者(シテ)に淀(よど)で魚を求めてくるよう言いつける。臆病(おくびょう)な太郎冠者は主人の太刀(たち)を借りて出かけるが、京都市中を出外れると、ちょっとした物影にもおびえ、人のいない闇(やみ)へ太刀を差し出して助けを請う始末である。あとをつけてきた主人がこれを見て太刀を取り上げ、扇で打つと冠者は気を失ってしまう。やがて正気に戻った冠者は帰宅して主人を呼び出し、淀へ行く途中大ぜいの賊に会い、さんざん戦ったが、太刀が折れたので逃げ帰ってきたと、でたらめの武勇談を並べ立てる。事実を知っている主人は存分にしゃべらせたのちに、太刀を見せて、冠者の臆病ぶりをしかる。冠者の仕方話による空腕立(そらうでだて)(偽りの武勇自慢)が見どころ。
[林 和利]
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