空腕(読み)ソラウデ

デジタル大辞泉 「空腕」の意味・読み・例文・類語

そらうで【空腕】

狂言主人腕自慢太郎冠者を試そうと夜道を使いに出す。太郎冠者は途中こわさのあまり黒く見えるものを追剝おいはぎと思って、借りてきた主人の太刀を差し出して助けを請い、あとをつけてきた主人に取り上げられる。太郎冠者は帰ってから自慢話をし、太刀を見せられて驚く。

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精選版 日本国語大辞典 「空腕」の意味・読み・例文・類語

そら‐うで【空腕】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 実力がないのにする腕自慢。そらうでだて。〔文明本節用集(室町中)〕
  2. [ 2 ] 狂言。各流。主人が腕自慢の太郎冠者をためしてみようと、夜道を使いにやる。太郎冠者はこわさのあまり、相手もいないのに命ごいに主人の重代の太刀(たち)を出し、あとをつけて来た主人に取り上げられるが、主人と気づかず帰るとまた自慢話をし、太刀を見せられて驚く。

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改訂新版 世界大百科事典 「空腕」の意味・わかりやすい解説

空腕 (そらうで)

狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵・和泉両流にある。ある夕暮れ,主人は太郎冠者に,来客接待用の鯉を淀へ行って求めてこいと言いつける。臆病な冠者は用心のため主人の太刀を借りて出かけるが,洛外へ出ると早くも物影におびえ,追剝(おいはぎ)と思い込んで平身低頭し,太刀を差し出して命乞いをする。ひそかに跡をつけてきた主人はこのようすを見て,太刀を取り上げ,扇で背中を打つと冠者は気絶する。主人は先に帰るが,やがて正気づいた太郎冠者は命が助かったことを喜び,帰宅すると主人に向かい,淀へ行く途中,大勢の賊と戦い,さんざんにやっつけたが,太刀が折れたのであとを見ず逃げ帰ったと,武勇談を並べ立てる。主人は,取り上げた太刀を見せて事実をすっぱぬき,なおごまかそうとする冠者を追い込む。登場するのは太郎冠者,主の2人で,太郎冠者がシテ。曲名は,偽りの腕力自慢の意の〈空腕立て〉からきている。中心部分はシテの仕方話によるひとり舞台で,技術本位の狂言。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「空腕」の意味・わかりやすい解説

空腕
そらうで

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。暮れ方、主人は太郎冠者(シテ)に淀(よど)で魚を求めてくるよう言いつける。臆病(おくびょう)な太郎冠者は主人の太刀(たち)を借りて出かけるが、京都市中を出外れると、ちょっとした物影にもおびえ、人のいない闇(やみ)へ太刀を差し出して助けを請う始末である。あとをつけてきた主人がこれを見て太刀を取り上げ、扇で打つと冠者は気を失ってしまう。やがて正気に戻った冠者は帰宅して主人を呼び出し、淀へ行く途中大ぜいの賊に会い、さんざん戦ったが、太刀が折れたので逃げ帰ってきたと、でたらめの武勇談を並べ立てる。事実を知っている主人は存分にしゃべらせたのちに、太刀を見せて、冠者の臆病ぶりをしかる。冠者の仕方話による空腕立(そらうでだて)(偽りの武勇自慢)が見どころ。

[林 和利]

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