穿(読み)セン

デジタル大辞泉 「穿」の意味・読み・例文・類語

せん【穿】[漢字項目]

人名用漢字] [音]セン(呉)(漢) [訓]うがつ はく
穴をあけて通す。うがつ。「穿孔穿鑿せんさく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「穿」の意味・読み・例文・類語

うが・つ【穿】

〘他タ五(四)〙 (古くは「うかつ」)
① 穴を掘る。
書紀(720)雄略八年二月(前田本訓)「乃ち夜険(さかしき所)を鑿(ウカ)ちて地道(したつみち)を為りて」
② 穴をあける。棒状のものなどで貫き通す。貫く。突きぬく。
※土左(935頃)承平五年一月一七日「棹はうがつ、波の上の月を。船はおそふ海のうちの空を」
③ (比喩的に、「鼻をうがつ」などの形で) においが貫くように強く刺激する。
※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)一「シュウキ ビクウヲ vgatçu(ウガツ)
④ (比喩的に) ある場所を通り抜ける。貫くように進む。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七「僕は種々の事を考へながら上野の森を穿って、〈略〉不忍池の方へ下りるのが常であった」
⑤ 隠れた事情や細かい事実、また、世態人情機微を指摘する。
※絅斎先生敬斎箴講義(17C末‐18C初)「守口と云も、其合点じゃと云、穿た説じゃぞ」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)二「をかしみあることどもをひろひあつめ人情のありさまをくはしくうがちて」
⑥ 凝ったことをする。新奇で変わったことをする。
洒落本・浪花今八卦(1773)「桔梗卦〈略〉色八卦時代には紋ももやうも大きにうがち過て賤しき場もありしが」
⑦ 服、袴(はかま)、はきもの、手袋などを身につける。
読本忠臣水滸伝(1799‐1801)前「身には一領大紋直垂を穿(ウガ)ち」

う・ぐ【穿】

〘自ガ下二〙 (「うがつ(穿)」の自動詞形。古くは「うく」)
① 掘られたり、削られたりして穴があく。えぐりとられたようになる。
※醍醐寺本遊仙窟康永三年点(1344)「俗諺に云く、心に専ら欲することは石をも鑿(うが)て穿(ウケぬ)
② (鼻、かさぶたなど、出っぱったものが)欠けおちる。とれる。
伊呂波字類抄鎌倉)「 ハナウケタル」
③ (「眼うく」の形で用いる) 無量の思いで遠望しつづけ、眼がおちくぼむ。
※白氏文集天永四年点(1113)三「眼は穿(ウクレ)ども蓬莱の嶋をば見ず」

うがち【穿】

〘名〙 (動詞「うがつ(穿)」の連用形の名詞化)
① 穴をあけること。貫き通すこと。
② 一般に気づかれていない裏の事情や細かい事実、世態、人情などの複雑で微妙な点を指摘すること。また、その指摘されるような事柄
※洒落本・通言総籬(1787)一「たき川が三つ七宝の紋所をかへず、九重かぶろの外に男の子をかかへておくことなどは、今でのうがちだ」
③ 新奇で、凝ったことをすること。
※洒落本・大通契語(1800)「此里の穿(ウガチ)にて道具やと見せて引手茶屋
遊女の意地が強いこと。
※歌舞伎・傾城天の羽衣(1753)四幕「『うがちとは何じゃへ』『夫は女郎の張のつよいをうがちといふはいの』」

ほじ‐く・る【穿】

〘他ラ五(四)〙
① 穴をあけて中をしきりにつつく。ほってつつきまわす。隙間にはさまったものをつつき出す。ほじる。
※雑兵物語(1683頃)下「敵地ならば、見付次第ほぢくるべいぞ」
② 隠れた物事をわずかなことまでさがし出す。あばきたてる。
※家(1910‐11)〈島崎藤村〉下「左様ホジクらないで…〈略〉何故そんなに遊ぶと責めるよりか、何故もっと儲けないと責めた方が可い」

ほじ・る【穿】

〘他ラ五(四)〙
① 突ついて穴をあける。掘って突つき回す。掘る。
※雑兵物語(1683頃)下「此中敵地でほぢって来たかったの根をにくさらかして馬にはませべい」
② わずかのことまで追及する。ほじくる。
※いたづら小僧日記(1909)〈佐々木邦訳〉「何から何まで掘(ホジ)って聞くから」

ほぜ‐く・る【穿】

〘他ラ五(四)〙 =ほじくる(穿)
※仁説問答師説(1688‐1710)宝永三年講「剔は、中からほぜくり出すことを云」

ほぜ・る【穿】

〘他ラ四〙 =ほじる(穿)
※玉塵抄(1563)一四「虎がなれあさどって、ついつほぜつつしたぞ」

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世界大百科事典(旧版)内の穿の言及

【石碑】より

…暈には2~3本の虹形凹線を一方にかたよせて刻(ほ)る場合と,左右対象に刻る場合があり,ここを竜の浮彫で飾ることもある。円首,圭首ともに碑身の上部中央に円孔を貫通させ,これを穿(せん)とよぶ。穿の上部に碑の表題を篆書(てんしよ)で刻り,これを篆額,題額あるいは碑額という。…

※「穿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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