デジタル大辞泉
「九重」の意味・読み・例文・類語
きゅう‐ちょう〔キウ‐〕【九重】
1 いくえにも重なること。「錦衣九重」
2 宮中。宮廷。ここのえ。
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ここの‐え‥へ【九重】
- 〘 名詞 〙
- ① 九つ重なっていること。物が幾重にも重なること。また、そのかさなり。
- ② ( 昔、中国の王城の門が九つ重なっていたところから ) 天子の住居を囲む門や塀、また住居そのもの。宮中。禁中。皇居。和歌においては文字通り「九つ重なっていること」の意を掛けて用いることが多い。
- [初出の実例]「長歌詞曰〈略〉乱糸の 乱て有れど 九重の 御垣之下に 常世鴈 率連て 狭牡鹿の 膝折反し」(出典:続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月庚辰)
- 「稚(おさな)くより内にのみおはしまし、ここのへの隔(へだて)多かりしに」(出典:栄花物語(1028‐92頃)紫野)
- 「いにしへのならのみやこのやへざくらけふここのへににほひぬるかな〈伊勢大輔〉」(出典:詞花和歌集(1151頃)春・二九)
- ③ 皇居のあるところ。みやこ。帝都。また、枕詞のように「都」にかけて用いることもある。
- [初出の実例]「九えの宮こをいでて、八への塩路をわきもって参らせ給ふ」(出典:平家物語(13C前)四)
- 「八幡の官軍に力を付け、九重(ココノエ)の凶徒を亡すべき道たるべく候」(出典:太平記(14C後)二〇)
- ④ ( 禁中の人の意から ) 公家。
- [初出の実例]「八声の鶏九重(ココノエ)の奥様」(出典:浮世草子・浮世栄花一代男(1693)二)
- ⑤ ( 昔、貴人が用いたところから ) 御召縮緬(おめしちりめん)のこと。
- [初出の実例]「壱歩五十肌着の衣裏(ゑり)に縫こみ九重(ここのエ)の守袋を掛させて」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)一)
- ⑥ 宮城県仙台市の名物の菓子。糯米(もちごめ)粉で製した香煎(こうせん)のまわりに砂糖をからめたものに熱湯を加えて飲料とする。明治天皇の行幸を記念するため、仙台の菓子商が作って命名したもの。
- ⑦ 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。百二十種名香の一つ。
きゅう‐ちょうキウ‥【九重】
- 〘 名詞 〙
- ① いくえにも重なること。また、いくえにも重ねること。
- [初出の実例]「身隔二九重一、多未二詳委一」(出典:続日本紀‐神亀四年(727)二月甲子)
- 「神陵三月の火九重(キウテウ)の雲を焦し」(出典:太平記(14C後)二六)
- ② 宮中。宮廷。九重の天。ここのえ。
- [初出の実例]「九重逢二九日一、三斝酔二三一」(出典:菅家文草(900頃)二・九月九日侍宴)
- [その他の文献]〔楚辞‐九弁〕
く‐じゅう‥ヂュウ【九重】
- 〘 名詞 〙
- ① 九層であること。また、幾層も重なり合っていること。きゅうちょう。
- [初出の実例]「赤県のうち、白川のほとり、六勝寺、九ちうの塔よりはじめて〈略〉全きは一宇もなかりけり」(出典:中院本平家(13C前)一二)
- ② ここのえ。内裏。きゅうちょう。きゅうじゅう。
- [初出の実例]「九重(くヂウ)の宮の内に遊戯(ゆげ)し給こと、忉利天女の快楽(けらく)を受けて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)もとのしづく)
ここの‐かさね【九重】
- 〘 名詞 〙 ( 「九重」の訓読み )
- ① 宮中。ここのえ。
- [初出の実例]「ここのかさねの なかにては あらしのかぜも きかざりき〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)
- ② 都。ここのえ。
- [初出の実例]「雲はるるここのかさねの秋の空月に嵐のこゑもきこえず〈藤原実興〉」(出典:文明九年石清水社法楽百首(1477))
きゅう‐じゅうキウヂュウ【九重】
- 〘 名詞 〙
- ① 内裏の九つの門。九門。
- [初出の実例]「Qiǔgiǔ(キュウヂュウ)。すなわち、キュウモン」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ② 内裏。ここのえ。
- [初出の実例]「九重(キウヂウの)花洛を出、千里の異域に移らせ給ふ」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)下)
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九重(町)
ここのえ
大分県西部、玖珠郡(くすぐん)にある町。1955年(昭和30)野上(のがみ)町と南山田(みなみやまだ)、東飯田(ひがしはんだ)、飯田の3村が合併して改称。町名は、九州の屋根といわれる九重(くじゅう)火山群による。北部に国道210号、JR久大(きゅうだい)本線が通じ、大分自動車道の九重インターチェンジがある。西部の国道387号の沿線には壁湯(かべゆ)、宝泉寺(ほうせんじ)、川底(かわそこ)などの温泉、飯田高原のやまなみハイウェイ沿線には長者原(ちょうじゃばる)、筌ノ口(うけのくち)、星生(ほっしょう)などの温泉や寒ノ地獄(かんのじごく)の冷泉がある。また、展望に優れた牧ノ戸峠(まきのととうげ)や渓谷美の九酔渓(きゅうすいけい)のほか、八丁原(はっちょうばる)と大岳(おおたけ)には九州電力の地熱発電所がある。玖珠盆地と玖珠川谷の米作と、広い原野の牧牛が主産業で、キャベツ、トマトなどの高原野菜やシイタケの産もある。面積271.37平方キロメートル(境界一部未定)、人口8541(2020)。
[兼子俊一]
九重
ここのえ
宮城県仙台市の名菓。香煎(こうせん)の一種であるが、掛け物の部類にも入る。餅(もち)を麻の実大に刻み、ユズ、ブドウ、挽茶(ひきちゃ)の入った糖蜜(とうみつ)を煎(い)りながらまぶす作業を繰り返す。これをカップに適宜入れて熱湯を注ぎ、粒状の餅が浮き上がったところで飲料とする。同種の菓子に、新潟県の柚香理(ゆかり)がある。いずれも原料は、やせ田の早生糯米(わせもちごめ)を最上とする。
[沢 史生]
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九重[町]【ここのえ】
大分県西部,玖珠(くす)郡の町。中心は玖珠盆地で,久大本線,国道210号線が通じる。米作,野菜栽培が行われ,高原では牧牛が盛ん。南部は阿蘇くじゅう国立公園に属するくじゅう連山や飯田(はんだ)高原があり九州横断道路が通じている。地熱発電所がある。九重温泉郷がある。2005年にくじゅう坊ガツル・タデ原湿原がラムサール条約登録湿地となる。2006年10月には,鳴子川渓谷に歩行者専用大吊橋(つりばし)の九重"夢"大吊橋が完成。271.37km2。1万421人(2010)。
九重【ここのえ】
乾菓子に砂糖を引いた掛物菓子の一種。餅(もち)を細かく切って炒(い)って芯(しん)とし,ユズ入りの黄色い砂糖液をかけて粒状にしたもので,熱湯を注いで飲む。かおりがよく砂糖液はとけて芯が浮き上がる。ユズのほかブドウや抹茶(まっちゃ)を入れたものもある。仙台市の名物。
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九重[町] (ここのえ)
大分県西部,玖珠(くす)郡の町。人口1万0421(2010)。玖珠川上流に位置し,玖珠川流域の米作,飯田(はんだ)高原の牧牛を中心に農業が行われる。観光資源に恵まれるため第3次産業も盛んである。国道210号線,大分自動車道やJR久大本線が通じ,恵良駅から宮原線(1984年廃止)が分岐していた。町域の大半を占め,九重連山の北側に広がる飯田高原には鳴子川渓谷や九酔渓などの景勝地があり,九州横断道路(別府阿蘇道路。1994年無料開放)が通る。周辺には筋湯,星生,牧ノ戸,筌ノ口,宝泉寺,川底,壁湯などの温泉や寒ノ地獄がある。阿蘇国立公園の一角を占め,国民宿舎,キャンプ村,歴史民俗資料館,地熱発電所などがある。
執筆者:萩原 毅
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普及版 字通
「九重」の読み・字形・画数・意味
【九重】きゆう(きう)ちよう
神聖の居る所は九重に囲まれているので、天や宮城をいう。〔宋書、恩倖伝論〕夫(そ)れ人君は南面し、九重に奧(あうぜつ)す。字通「九」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
九重
宮城県仙台市、九重本舗玉澤が製造・販売する銘菓。あられ球の粒に柚子、ぶどう、茶の風味をつけた糖衣を絡めたもので、湯や水を注いで飲む。
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