第3のビール(読み)だいさんのびーる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「第3のビール」の意味・わかりやすい解説

第3のビール
だいさんのびーる

ビール発泡酒とは異なった原料製法でつくったビール風味アルコール飲料総称。日本の旧酒税法(2018年3月以前)下で、ビール(水、ホップを除く原料に占める麦芽使用率が3分の2以上)や発泡酒(水、ホップを除く原料に占める麦芽以外の使用率が3分の1以上)に該当せず、低酒税率を適用できるようにビール会社が開発した酒類である。(1)エンドウ豆、大豆トウモロコシなど麦・麦芽以外の原料を使用した「その他の醸造酒」、(2)発泡酒に他のアルコール飲料を混ぜた「リキュール」、に分類される。国税庁やビール会社はビールと誤認されないよう「新ジャンル」とよんでいる。

 2003年(平成15)の酒税法改正による発泡酒の税率引上げ(350ミリリットルで10円増)を機に、ビール会社が発泡酒にかわる割安なビール風味飲料として開発した。サッポロビールが2003年、麦芽のかわりにエンドウのタンパク質を原料に開発した「ドラフトワン」が第1号商品(2004年に全国販売)で、その後ビール大手が次々と開発。ビールや発泡酒より酒税率が低く安いために売上げが急伸。2006年の酒税法改正で第3のビール増税(350ミリリットルで3.8円引上げ)とビール減税(同0.7円引下げ)の同時実施後も売上げは伸び続け、人気商品となった。海外産の商品も登場し、2008年には第3のビールの出荷量が発泡酒を上回り、2019年(令和1)にはビール系飲料全体の約4割を占めた。政府は2017年の酒税法改正で、「ビール」「発泡酒」「第3のビール」の定義変更(2018年4月施行)し、三つでばらばらであった酒税を2020年10月から2026年10月にかけて段階的に、350ミリリットル当り54.25円に統一する。このため第3のビールは26.25円の増税(2020年10月に9.8円、2023年10月に9.19円、2026年10月に7.26円)となる。2023年10月には第3のビールは発泡酒と税率・定義ともに統一されることから、ビール会社の商品開発に影響するものとみられる。

[矢野 武 2021年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「第3のビール」の解説

第3のビール

ビールのような風味を持ちながら、酒税法上はビールや発泡酒より税率の低い「その他の発泡性酒類」に分類されるため、低価格で流通しているアルコール飲料。2013年の出荷量は、ビール系飲料全体の36.5%を占めた。
ビールなどの発泡性酒類にかかる酒税は、原料や製法によって税率が異なる。ビールは原料に占める麦芽比率が3分の2以上のものを指し、1リットル当たりの酒税は220円と最も高い。これに対し、麦芽比率25%未満の発泡酒は同約134円で、麦芽以外の原料で作るか発泡酒に蒸留酒を加えて作る第3のビールは同80円と更に低い。このため、第3のビールの小売価格は、350ミリリットル缶で約140円前後とビールより80円程度安く、低価格を武器に出荷量を増やしてきた。
ビール各社は1990年代以降、税率の低いビール系飲料の開発に力を注いできた。94年にサントリーが原料の麦芽を減らした発泡酒「ホップス生」を送り出すと、他社も追随した。発泡酒への課税が強化されると、2003年にサッポロビールが麦芽の代わりにエンドウマメを使った第3のビール「ドラフトワン」を発売し、他社も相次いで参入するなど税制をにらんだ開発競争を展開してきた。こうした中でサッポロが14年、前年に発売した「プリン体ゼロ、糖質ゼロ」の第3のビール「極ZERO」は第3のビールに当たらない可能性があると、国税庁から指摘を受けた。サッポロは差額分の酒税約116億円を追加で納め、この商品の製造を中止した上で製法などを見直し、同じ商品名で発泡酒として再発売した。国税庁の指摘で分類を見直し、価格を引き上げる異例の事態となった。

(原田英美  ライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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