麦芽(読み)ばくが(英語表記)malt

翻訳|malt

精選版 日本国語大辞典 「麦芽」の意味・読み・例文・類語

ばく‐が【麦芽】

〘名〙 オオムギを水に浸して発芽させたもの。また、他の穀物の種子を発芽させたものもいう。澱粉などの糖類ビタミン類を含み、アミラーゼも強い。栄養剤、消化剤家畜飼料に用いられるほかビール醸造や麦芽糖の原料とされる。
随筆・嬉遊笑覧(1830)一〇上「すはまは洲浜にて、〈略〉麦芽大豆を粉にしてねり竹皮に包みたる物なり」

ばく‐げ【麦芽】

〘名〙 大麦のもやし(日葡辞書(1603‐04))。

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デジタル大辞泉 「麦芽」の意味・読み・例文・類語

ばく‐が【麦芽】

麦を発芽させたもの。特に、大麦のものをいう。ビール・水飴みずあめの製造に用いる。麦もやし。
[類語]木の芽若芽新芽冬芽ふゆめ冬芽とうがひこばえ花芽はなめ花芽かが葉芽下萌え頂芽腋芽むかご肉芽もやし

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改訂新版 世界大百科事典 「麦芽」の意味・わかりやすい解説

麦芽 (ばくが)
malt

発芽,発根させたオオムギを乾燥し,幼根を除去したもの。デンプンを糖化する酵素をはじめ,胚乳組織を分解する種々の酵素が発芽時に生産されることを利用し,糖化剤を兼ねたデンプン原料としてビール,ウィスキー,飴(あめ)あるいは麦芽酢の製造に用いられる。麦芽製造の歴史は古く,記録では前4000年ころの古代バビロニアにさかのぼることができる。当時はオオムギを堆積し,水をまき,発根したところで広げ,天日で乾燥した。この技術は前3000年には古代エジプトに伝えられ,オオムギの栽培に適する地中海気候地帯に広がり,中世にはドイツを中心として北ヨーロッパ諸国まで普及した。中世における製造技術は基本的に古代と変わらないが,発芽工程でかくはんし根芽の絡みを防ぐとともに酸素を供給し,温度を調節した。また麦芽の乾燥は火力に改良された。近代に入り,18世紀後半の産業革命に伴う各種の計器,機械類の発明により,製造技術に大幅な改良が加えられた。すなわちオオムギの浸漬(しんし)から発芽,乾燥にいたるまでの工程の温度,湿度,通風を最適条件に調節しうる浸漬槽,発芽床(発芽缶),乾燥床が開発され,製造所要日数も従来の1ヵ月前後から10日前後へと大幅に短縮された。現代でも製造の大型化,自動化が進んでいる。

水温が12℃前後の水にオオムギをひたし,ときどき換水して麦の水分含量が41~47%に達したところで発芽床に移す。発芽は14~18℃で行い,加湿空気で酸素を供給し,さらに機械的なかくはんも行う。発芽した芽の長さが穀粒の長さの1/2~3/4程度になったところで熱風乾燥する。濃色ビール用の麦芽は淡色ビール用より乾燥温度を高くして着色させる。またスコッチ・タイプのウィスキー製造用の麦芽は泥炭をたいて乾燥し,いぶし臭をつける。乾燥後幼根を除去する。発芽させたばかりの湿ったものを緑麦芽,これを加熱乾燥し貯蔵できるようにしたものを乾燥麦芽という。6世紀初頭の中国の農書《斉民要術》にコムギの麦芽〈糵(げつ)〉の製法があり,餳(とう)すなわち飴をつくっている。さらにこはく色の餳をうるにはオオムギの麦芽がよいとしている。
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百科事典マイペディア 「麦芽」の意味・わかりやすい解説

麦芽【ばくが】

麦類の種子を発芽させたものの総称であるが,普通は大麦麦芽をさす。英語でモルトmalt。ジアスターゼが多量に含まれ,水飴(みずあめ)やビール,ウィスキーの製造などに利用。適当な温度,水分を与えて発芽させた大麦麦芽は,緑麦芽または生麦芽といって,糖化力は強いが保存できないので,乾燥し,幼根を除いた乾燥麦芽の形で利用。なお麦芽にはタンパク質分解酵素プロテアーゼも含まれ,ビールの味などに微妙な影響を与える。
→関連項目ビールもやし

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「麦芽」の意味・わかりやすい解説

麦芽
ばくが
malt

大麦の種子を発芽させたもの。ビール醸造の原料として重要なばかりでなく,微生物の培養基 (→培養 ) の調製に用いられることが少くない。大麦の芽がほんのわずか出たばかりのものはスピッツ発芽といい,デンプンの分解力は最も強いが,種子内のデンプンはほとんど未分解で糖分が著しく少い。これに対して芽が殻長ほどに伸びたものを短麦芽,1.5倍ぐらいに伸びたものを長麦芽といい,分解力は弱まるが糖分は多くなる。微生物の培養基の調製には短麦芽または長麦芽が,ビール醸造には短麦芽が最もよいとされている。

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「麦芽」の解説

ばくが【麦芽】

漢方薬に用いる生薬(しょうやく)の一つ。イネ科オオムギなどのムギ類を吸水・発芽させ乾燥したもの。消化酵素ジアスターゼを含み、食欲を増進させ、消化を助ける。健胃、消化などの作用がある。胃アトニー胃下垂胃腸虚弱に効く半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などに含まれる。

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普及版 字通 「麦芽」の読み・字形・画数・意味

【麦芽】ばくが

麦のもやし。

字通「麦」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「麦芽」の解説

麦芽

 オオムギ麦芽ともいう.オオムギを発芽させたもので,そのアミラーゼを利用する場合が多い.

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