ホップ(読み)ほっぷ(英語表記)hop

翻訳|hop

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホップ」の意味・わかりやすい解説

ホップ
ほっぷ
hop
[学] Humulus lupulus L.

クワ科(APG分類:アサ科)の多年生つる草。茎は他物に絡まって十数メートルに伸び、葉は深く3または5裂して葉身、葉柄ともに約10センチメートル。茎、葉ともに毛を密生する。雌雄異株で、花は夏に葉腋(ようえき)につく。雄花淡緑色で、円錐(えんすい)花序に多くつき小さく、5弁で、雄しべは5本。雌花は長さ約3センチメートル、楕円(だえん)形の松かさ形の花穂となり、淡緑色で長い柄で垂れ下がる。各花は鱗(うろこ)状の包葉に包まれ、各包葉の基部に、多数の黄色で微小なホップ腺(せん)とよぶ分泌器官がある。包鱗(ほうりん)ごとに小さい2個の痩果(そうか)が秋に結実するが、栽培上は雌株のみを植えるので、結実することはない。

 ヨーロッパ、西アジア地域原産で、ヨーロッパでビールの発達とともに、その付香料として栽培が広まった。日本へは1876年(明治9)にアメリカやドイツから北海道に導入された。若い未受精の雌穂のホップ腺からは、ビール特有の苦味成分となるフムロン、ルプロンなどが分泌され、それらはまたビールに香りをつけたり、ビールを清澄させる効果ももつ。雌穂を摘み集め、火力で乾燥して保存する。この乾燥ホップは現在大部分はヨーロッパその他から輸入されているが、国内でも北海道、山形岩手、長野県などで、ビール会社との契約栽培で生産されている。

 なおホップの雌穂には野生酵母菌が多く繁殖するので、これをパン用酵母などに用いられる。

 ホップ畑は寒冷な山間地などにつくられ、鉄柱鉄線を設置して、春に芽生えたつるを絡ませ、夏につるごと切って引き下ろし、雌穂を摘み取る。残株には施肥し、根の肥培に努めて、翌年の生産量の増大維持を図る。

[星川清親 2019年12月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホップ」の意味・わかりやすい解説

ホップ
Humulus lupulus; hop

アサ科の多年生のつる草で,セイヨウカラハナソウともいう。ヨーロッパ原産で,ビール苦み芳香をつけるのに用いるため,世界中で栽培されている。日本でも明治初期に初めて栽培されて以来,現在ではビールの需要の増加に伴い本州中北部(長野県,山梨県,福島県,山形県)や北海道などの冷涼地で栽培されている。地上部は冬に枯れる。雌雄異株で,植物体全体にとげのような粗毛がある。葉は卵形ないし卵円形で掌状に三裂ないしは五裂し,あらい鋸歯があって,長い柄で対生する。夏の終わり頃に,淡黄色の花が咲く。雄花は茎の先端や葉腋に円錐花序をなして多数つき,雌花は長楕円形ないし卵形の松かさ状で葉腋に集まってつく。包葉や子房には黄色の腺点があり,これを火で乾燥させて用いる。果実は痩果で鱗包がある。日本にはホップと同一種の変種とされるカラハナソウH. lupulus var. cordifoliusが北海道や本州の山地に自生する。同じ属のカナムグラH. japonicusは日本では雑草とされているが,欧米では日よけがわりに栽培される。ホップはビールの苦み料のほかに,健胃,鎮静,利尿剤として薬用にもされる。

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