リキュール(読み)りきゅーる(英語表記)liqueur

翻訳|liqueur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール
りきゅーる
liqueur

リキュール語源はラテン語のリクオルliquor(液体)からきており、これが古代フランス語のlicurとなり、現在のliqueurに変化したものである。

[原 昌道]

分類・定義

醸造酒や蒸留酒または純アルコール液に香料、色素を加えて香味づけをし、果実、種子、草根木皮などの風味と糖類の甘味を加えた特有の芳香がある、アルコール分の強い、甘い酒である。ただ、わが国の酒税法でいうリキュール類とは、製成された酒類と糖類、香味料、色素を原料とし、アルコール分が15%以上、エキス分が2%以上のものである。ただし、清酒、合成清酒、焼酎(しょうちゅう)、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒に該当するものは除かれる。

 フランスでは普通物ordinaires、上物fines、極上物surfinesとに分け、極上物にcrèmesとelixirsとがある。この区分はアルコール度数と糖分量による。たとえば上物は24.5%のアルコール分、40~50%の糖分を必要とし、極上物はアルコール分26.5%、糖分45~50%で香りも強くなっている。イギリス、アメリカではリキュールをコーディアルcordialという。これはラテン語コルディアーリスcordiālis(医薬)からきている。なお、アメリカのリキュールは、最終製品に2.5%以上の砂糖またはブドウ糖を含有していることと、合成香料、イミテーション香料は使用してはならないことになっている。

[原 昌道]

歴史

古代にはバラ水のような香水をつくる技術があったが、飲み物としてはヨーロッパの修道院で創製されたものが多く、初めは医薬として薬草を用いたものである。13世紀にはオレンジの花、レモン、バラなどからリキュールがつくられた。14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際には、植物性の香油や強壮剤を用いたリキュールは宝物のような薬であった。その後イタリアを経て16世紀ころからフランスの宮廷を中心にもてはやされ、一方では薬酒として寺院などで製造された。19世紀には今日のリキュール産業の基礎ができあがり、多くの著名なリキュールが生み出された。20世紀にはアメリカを中心としてカクテルの飲用が高まり、リキュールは新しい飲み方をされるようになり今日に至っている。一方、中国ではリキュールは薬酒として古くからつくられており、漢方の古典といわれる『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(西暦紀元前後)に、薬を酒に浸して飲むことが記されている。また1596年に出された『本草綱目』のなかには、69種の薬酒が載っている。わが国でも薬酒の歴史は古く、平安時代に宮中で用いられた屠蘇(とそ)酒が初めだといわれる。この酒は中国からきたもので、後漢(ごかん)の名医華陀(かだ)の創作である。

[原 昌道]

作り方

リキュールに特有の香味成分をつける方法として次の三つがある。

(1)浸出法 香味物質をアルコールやブランデー浸漬(しんし)し、香味成分を抽出する。果実や草本系の原料は主としてこの方法を用いる。

(2)蒸留法 浸出法で得られる浸出液を蒸留し、香味成分をアルコールとともに留液中に留出させる。

(3)エッセンス法 天然または合成の精油、そのほかの香味成分をエッセンスの形に調製したもの。

 調合は、このようにしてつくられた香味液に、アルコール、ブランデー、ラムなどの酒類や、糖類などの呈味物質や色素、水などを加え、短期間熟成して、清澄濾過(ろか)、瓶詰にする。酒類としてはジン、キルシュ、ウォツカ、ワイン、ウイスキーなども用いられる。

[原 昌道]

種類と特色

リキュールは種類が非常に多く、成分もまちまちであるが、一般にアルコール分は25~50%、エキス分は25~50%で、甘くて、特有の香りがある。リキュールを原料別に分けると、果実系(サクランボなどの果実を使用する)、果皮系(柑橘(かんきつ)類の果皮を使用する)、種子系(キャラウェーの実などを使用する)、草本系(各種の芳香植物の根、茎、葉、つぼみを原料にする)、花系(花の香味をつける)、乳化系(乳化製品を使用する)などに分かれ、その種類は多く、また香料物質の配合では各社独自の方法がなされている。

[原 昌道]

飲み方

リキュールは一般にアルコール分と糖分が強いので、ストレートで飲むよりは、食前酒として食欲増進用に、食後酒として清味用に少量飲まれる。そのほか、カクテル、製菓用にも使われる。梅酒はホームリキュールとして家庭で広く飲用されており、薬味酒は滋養強壮剤として飲まれている。

[原 昌道]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール
liqueur

精製した飲料アルコールに砂糖やシロップ,着色料,果実,薬草,香草,スパイスの抽出成分を混ぜ合せて造った一種の混成酒。酒税法上は,「酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの」とされていて特にアルコール分の制限はなく,エキス分が2度に達しないものはおもにスピリッツ類に分類される。香気が強く,甘味があるため,食事の味覚を悪くするので食後に用いるのがよいとされている。カクテルの材料としても用いられる。ヨーロッパで多く造られ,ベルモット,アブサン,キュラソーなどが有名である。東洋では薬酒として用いられる程度であったが,日本では近年,洋酒の需要がふえるにつれてリキュールの生産や輸入がふえている。 1989年の消費量は8万 9000klとなっている。

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