改訂新版 世界大百科事典 「筑摩川」の意味・わかりやすい解説
筑摩川 (ちくまがわ)
長唄の曲名。1879年10月,東京新富座初演。河竹黙阿弥作詞。3世杵屋(きねや)正次郎作曲。《鏡山錦栬葉(かがみやまにしきのもみじば)》という加賀騒動の狂言で,大月蔵人が鳥居又助に命じ,加賀の太守を殺させようとする場面に用いられた大薩摩物(おおざつまもの)。曲は本調子で,初め満水の筑摩川の叙景があり,又助が探り出る〈忍びの合方〉,つづいて勇壮な水馬のようすを表すが,ここへは人馬のひしめきを描いた〈初月の合方〉が入る。次は濁流滔々(とうとう)と渦巻くさまを描写した〈千鳥の合方〉,終りは〈幕三重〉で勇ましく曲を結ぶ。唄は豪壮なだけで,主として三味線が本領を発揮する曲で,芝居の激しい演奏曲が素(す)で残った代表曲である。
執筆者:浅川 玉兎
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