日本大百科全書(ニッポニカ) 「精上皮腫」の意味・わかりやすい解説
精上皮腫
せいじょうひしゅ
睾丸(こうがん)(精巣)の悪性腫瘍(しゅよう)の一型で、セミノーマseminomaともいう。腫瘍の割面は灰白色、均一で、被膜に包まれている。顕微鏡で見ると精子の発生過程の各段階に一致して、未分化型精上皮腫から精子細胞性精上皮腫までの腫瘍の型がみられる。睾丸腫瘍(精巣腫瘍)全体の35%で、発生年齢は、睾丸腫瘍としては比較的高年齢層の30歳以上に多く、40歳過ぎにもみられる。精上皮腫であっても絨毛(じゅうもう)性腫瘍のように絨毛性ゴナドトロピン(HCG、hCG)腫瘍マーカー(癌(がん)の存在の可能性を示す物質)が上昇していることがある。
治療としては早期に根治的に摘出する。その組織像が純粋に精上皮腫の組織像であれば、後腹膜リンパ節に対して放射線照射する。他の組織型、たとえば胎児性癌、絨毛癌、奇形癌が混在している例も多く、その場合は抗癌化学療法を行うが、予後は不良である。
[田崎 寛]