腫瘍マーカーとは、通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさや広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査で高値を示すようなら、その臓器に腫瘍のあることが推測されます。
婦人科の腫瘍でとくに特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣がんの場合に高値を示します。ただし、ほかの腫瘍マーカーでも同様ですが、
また、このCA125は月経中には高値になることがあるため、検査は月経時を避けて行うことがすすめられます。その他、骨折、イレウス(腸管閉塞)でも高値を認めます。
CA199は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに
卵巣がんは、いわゆる腺がんであることが多いのですが、
また、胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、
これらの腫瘍マーカーは、一般に病気の病状に従って増減しますが、その診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部にすぎないことを頭に入れておくことが大切です。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
癌(がん)細胞がつくりだす特異的な物質、また癌細胞に対して生体が生み出す物質。この物質の血中および尿中濃度を測定すれば、癌の存在およびその種類を知る手がかりとなり、また癌の大きさや進行度なども推定できる。しかし、癌以外の要因で高値を示す偽陽性の場合や、癌が存在しても高値を示さない偽陰性の場合もあり、これだけで確定診断とすることはできない。そのため、おもに癌診断の補助的手段として、また治療効果の観察や再発を監視するモニタリングなどの目的で用いられる。
代表的な腫瘍マーカーには、以下のようなものがある。
AFP(α(アルファ)フェトプロテイン) 肝細胞癌など。
CEA(癌胎児性抗原) 消化器癌、乳癌など。
CA19-9(糖鎖抗原) 膵(すい)癌、胆道癌など。
CA125(糖鎖抗原) 肺癌、乳癌、膵癌など。
hCG(ヒト絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン) 子宮癌、卵巣癌など。
NSE(神経特異エノラーゼ) 肺癌、神経芽細胞種、甲状腺癌など。
PSA(前立腺特異抗原) 前立腺癌。
これらのなかでPSAは、その存在が確定診断につながる数少ない腫瘍マーカーの一つである。マーカーの検査方法としてはおもに、採血してモノクローナル抗体を使い、血中に遊離してくる物質を検出して濃度を測定することが多いが、尿や分泌液など生検検体や癌の病理組織標本を用いたり、遺伝子産物を用いる特異な方法もある。研究の成果として、新しい腫瘍マーカーが次々とみいだされ臨床応用に結びつけられている。また、ある癌の腫瘍マーカーとして認められていたものが、ほかの癌のマーカーとして新たにみいだされることもある。
[編集部]
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